《MUMEI》
最期
ゾラの声が平原に響く。

直後、平原一帯の地面から低く唸るような声が聴こえてくる。

「ウオオオォォ…」

地面から泥にまみれた無数のゾンビが姿を現す。

「見るがいい。この美しい光景を…まさにゾンビパラダイスと呼ぶに相応しいだろう。略してゾンパラね。
…聞いていないようだな。お楽しみはこれからなのに…。よし、優しい俺が起こしてやろう。」

ゾラはデュラムに刺さっている剣を掴み勢いよく引き抜く。

「ガハアァ!!」

デュラムが呻く。

「起きた起きた♪…おお!大量出血だな。まさに大サービス…しかし、この剣はなかなか良い品だな。お前の部下から拝借した物だが…もちろん死体だ。お前ら人間どもの武器の質だけはハイクオリチーであると言ってやろう。お陰で良い金になる。
…だがな、大切なのは武器の質ではなく…その武器を扱う…」

その時、ゾラとデュラムがいる場所より前方で叫び声が上がる。

「デュラム様ー!ゾンビ共がー!敵襲です!!」

「デュラム様ー!指示をー!このままでは…うわぁ!」

「くそ…!貴様らぁ!よくも…!うおおぉ!」

ゾラがデュラムに話し掛ける。

「見えるか?お前の大切な部下達が俺のしもべ達に噛み殺される様子が。聞こえるか?部下達がお前に助けを求める声が。
いいのか?お前はこんなところで寝ていて…どうなんだ?ん?」

途切れかけた意識の中、デュラムは掠れた声で呟く。

「我が…グランディオ王国の…英雄神…カイトスよ…。どうか…戦士…達に…光……。
生き…残る……の…力…与え…どうか」


グシャッ!!


何かを潰すような鈍い音がした。

今、デュラムの頭があった場所にはゾラの血にまみれた両足と、デュラムのものであろう眼球、歯、その他肉片が飛び散っていた。

ゾラは両足を揃えてジャンプしデュラムの頭に着地したようだ。

「ありきたりな祈りや神頼みなんかどーでもいいっての。つーかここは魔界だから。人間界にいるであろう…いるのか?…よく知らんが神に祈ったって無駄だから。よくいるよなー…こういう時だけ都合良く祈る奴。現実は甘くないぞ?」

もう動かなくなったデュラムに話し掛けるゾラ。

「うーむ…もう完璧に死んでるな…目玉飛び出てるし。…ま、いいか。さて、前の方はどうなったかな?」

聖騎士デュラムの亡骸を放置してゾラは戦闘が行われているであろう前線へ歩き出す。

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