《MUMEI》 「……一緒に居るから、大事?」 「う〜ん。微妙に逆、かな。大事だから一緒に居る、みたいな」 「そう、なのかな」 今一、よく分からない その微妙な違いが分からず佐藤の眉間に皺が寄る 小さな呻き声まで上げ始めてしまう佐藤に相手は慌ててフォローを入れ始めた 「今すぐ理解しなくてもいいんじゃないかな?」 ゆっくり理解していけばいいんじゃないかと相手 佐藤は頷く事をすると食事を食べきる 「食った?なら行くぞ」 それを確認した三浦が佐藤の頭の上に手を置いた 見計らった様に佐藤の頭に三浦が手を置いた そのままその場を後にしようとする三浦の後を佐藤は追い 途中、振り返ると相手へと頭を下げ其処を出た 会話は聞こえては居なかっただろうか? 何となく気恥しく、気付かれないよう三浦の方を伺い見れば どうやら聞こえていなかった様で三浦にさして変わった様子はない ホッと旨を撫でおろせば 「大事ってのが何なのかってのは、ゆっくり探していけば良いと思うぞ」 「士郎君、聞こえて……」 聞こえてはいないだろうと安堵していただけに聞こえて居たというのはかなり恥ずかしい 顔を真っ赤に伏せてしまった佐藤へ 三浦はフッと肩を揺らすと、佐藤の手を取ってやり歩き始めた 何処かへいくのか、との佐藤へ 「そろそろ、送ってく」 携帯で時間を確認しながら、三浦は帰路を進む その一歩後ろに付いて歩く佐藤 途中、なぜか立ち止まり、どうしたのかと振り返って見れば 佐藤の頬を一筋涙が伝っていた 「な――!?」 行き成り泣き出してしまった佐藤に驚く三浦 何か、鳴かせてしまう様な事をしてしまったのだろうか 内心焦ってしまい、三浦は佐藤へと向き直ると、目線を合わせてやるため膝を折った どうしたのかを問うてやれば、佐藤は答えるでもなく首を横へと降って見せる 唯それを繰り返すばかりの佐藤へ 三浦はそれ以上何を聞くでもなく、自身の肩に佐藤の顔を押し付けてやった 「……士郎、君」 「まぁ、今は泣いとけ」 それで落ち着くならば、それが一番良いだろうと 往来の目は気になるものの、三浦は佐藤のしたい様にさせてやる事に 一体何がこの少女をこれ程までに不安にさせているのだろうか? そんな事をぐるぐると考えながらも 深くその内に立ち入って傷つけてしまうことが怖かった だからこうして肩を貸してやることしか出来ないのだ 無力でしかない自身に嫌悪感を抱いてしまえば、佐藤がようやく顔を上げる もう大丈夫かを尋ねてやれば佐藤は小さく頷いた 顔を上げ、何度も目元をこするその手を、三浦ややんわりと止めてやっていた 「あんまり擦るな。赤くなる」 止めてやった代わりに三浦が柔らかく指先で涙を拭ってやる だが泣き止んでくれる気配はなく、益々その涙は溢れてしまう 「……お父、さん」 しゃくり上げる中に混じる声 其処で三浦は気付く 佐藤と母親、その間に父親という存在がないという事に だが今その理由を問い質してやる事は酷なのだろうと 今の佐藤の様を見、三浦はそう感じ取る だから今は気が済むまで泣かせてやろうと佐藤の顔を自身の肩口に押し付けてやった 布に段々と染み込んでくる涙 おそらく、今までこんな風に旨の内を吐き出す場所などなかったのだろう 「俺でいいなら、ぜんぶ吐き出せ。聞く位はしてやれるから」 寧ろ、それしかしてやれない どれだけ近く在っても、自分は何も出来ないのだと 三浦は無力でしかない自身に歯がゆさを覚えるばかりだ 「……取り敢えず、家来るか?」 未だ泣くばかりの佐藤をこのまま一人には出来ない、と 三浦はその手を引くと帰路に着く 「……士郎君、ごめんなさい」 歩きながら、徐に謝罪の言葉 何に対しての謝罪だろうかと、僅かに首を巡らせ様子を窺えば 互いに握っている手に僅かに力が入った 「……私、士郎君に凄く甘えてる、から」 ごめんなさい、と頭を下げてくる佐藤 謝らなくても、別に良いのに 何度も頭を下げてくる佐藤に三浦は苦笑し肩を落とす 「士郎君?」 それをまた溜息と勘違いしたのか、佐藤の表情が泣き顔に崩れる 泣いてしまう寸前、三浦に手が佐藤の髪を撫でていた 「……お前なら、いい気がする」 前へ |次へ |
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