《MUMEI》
事故
お気に入りのDVDを観ていても、こんなに早く出たことはなかった。
それに……、すごく飛んだ。


綾女に言われた通りにして酷いことを言われて、痛みも耐えたのに綾女は喜ぶどころか、怒気を帯びた目で僕を睨み付けている。

「…わざと?」

綾女に言われて視線を落とすと、綾女の脚に精子が飛んでいた。

「ちっ…違っ……違うんだ、あの……」

いつもは、こんなになることはなくて、今日は綾女が見てくれてたから想像以上に興奮しちゃったんだ、綾女があまりにも綺麗だったから…。
そう言いたかったけど、やっぱり僕の口からは、”ごめん“としか出てこなかった。


勿論、わざとかけたわけじゃない。


わざとじゃないけど……

綾女の体に、僕の遺伝子が入った体液がかかったという事実は、僕をなんとも言えない気持ちにさせる。


触るなと言われていたのに、僕の遺伝子たちが、綾女の脚に触れた。
綾女の綺麗な脚が、僕で汚れた…”気持ち悪い“僕の…、汚いもので…。

「ほんと気持ち悪い、最悪…」

言いながら綾女は、枕元のティッシュで脚を拭く。

「ねぇ、シャワーするからタオル出してよ」

「えっ…!?…あ…う、うん」

「その前に服着たら?いつまでも裸でバカみたい」

タオルを取りに行こうと立ち上がった僕を、綾女が冷たく笑った。





綾女が脱ぐように言うから脱いだのに…。
早くシャワー浴びたいだろうと思ったから、急いで取りに行こうと思ったのに…。


僕は常に綾女のことを考えて、綾女を優先して行動しているのに、綾女はいつも迷惑そうにしたり、僕をバカにしたりする。

「ねぇ、下着、間違えてるけど」

いつもの部屋着を着ようとした僕は、綾女に言われて男性用の下着から、女性用の下着に変えた。

「ふふっ、いつ見ても笑えるね、その格好…全部出ちゃってるもん……汚い」

嘲笑う綾女に何も言えず、僕はタオルを取りに部屋を出た。

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