《MUMEI》
ごめんね
僕は、ただの言葉なんかに翻弄された。


綾女だって年頃の女の子なんだ。
恥ずかしくて、素直になれないときだってある。
それに綾女は、しっかりしているように見せて、しっかりしているわけじゃない。
ただ、気が強いだけ…、強がりなだけなんだ。


ずっと綾女を見てきた僕が、理解してあげていなきゃいけなかったんだ。
素直になれない恥ずかしがりな綾女を、僕が受け止めてあげなきゃいなけないのに…。

「ごめんね…ごめんね、綾女…たくさん無理させちゃったね」

ベッドに顔を埋めると、綾女の匂いが残っている気がして、僕は何度も深呼吸をしながら、今日二回目の射精をした。








「ねぇ」

ベッドを整えているとドアが開いて、綾女の声がした。
ドアを開けただけなのに、シャンプーのいい香りがして僕は、ドキドキして振り向けなかった。




同じシャンプーを使った筈なのに、どうしてこんなに違う香りがするんだろう。

お風呂上がりだから、もしかしたら綾女は、タオル一枚で僕の後ろに立っているのかも知れない。




そんなことを考えると、また下半身が反応してしまう。
そんな自分を、ふと客観的に見て、新婚ってこんな感じなのかな、と思う。

「ねぇ、聞こえてる?」

綾女の問いかけに、僕は何度か頷いた。

「あたしリビング借りるから、なんか用事あんなら済ませといてよ」

綾女の言葉に驚いて振り返ると、綾女はシャワーを浴びに行く前と変わらない姿で、そこにいた。

「なに?その反応…リビングじゃまずいの?」

「…ぃゃ……そ、そうじゃ…ないんだけど…」

「じゃあ問題ないでしょ」

そう言って綾女は、リビングから出てくるまで入ってこないように、と僕に伝えて部屋を出て行った。


一緒に寝るもんだと思っていた僕の予想は外れたけど、それでも同じ屋根の下に綾女といるという事実は、僕を興奮させるには十分すぎて…その日、僕はなかなか寝付けなかった。

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