《MUMEI》

「一年生、四人は確保しなきゃ。同好会になる。」

顧問が頭を悩ませる。五人未満は同好会扱いで部費も減少する。俺達三年が引退したら幽霊部員の高遠しかいなくなる。いや、いないようなものだ。


「高遠は誰かいないの?」

東屋が高遠に聞き出す。


「いる訳ないじゃないですか。俺、学校にもあまり来てないんですよ。
それこそ部の紹介のとき映像を流すだけにしないで美作先輩達が前に出て発声練習でもすればいいじゃないですか。ビジュアル重視の頭弱ぁ〜い女の子が来るかもしれないでしょ。」

高遠って友達いなさそうだ……


「いいな、それ。皆で出てさ。」

予想外の顧問の食いつき。


「俺、嫌ですけど」

こいつ、言い出しっぺのくせに。


「高遠言った分責任取れよ。決まりだな、4日後にあるから練習しろ。」

顧問命令でごり押しされた。


七生にも言わなきゃな……バイト休んでもらって、……てことは七生と帰れるじゃないか。


「今から練習、した方がいいね」

嬉しくなって来た。


「三人しかいないのにー?」

東屋も高遠もやる気がない。

東屋と高遠と俺で三人。七生はバイト、乙矢は生徒会だ。せめて三人で合わせて見られるようにしたい。


案の定、二人は当日に合わせることになった。
数時間の練習でなんとかなるものだ。

乙矢や七生、高遠見目麗しい男子共が並ぶと目立つ……。じゃんけんで勝って東屋をイケてるメンズの盾にした。




「終わったー!」

帰れる〜……七生と早く帰るの久しぶり。


「木下、部活動しておいて、去年のコンクールで出した映像流してアピールしておけ。」

……か、帰れない!


「映像流す準備しよー」

俺の気持ちを汲んでくれてか七生が袖を引いて急かした。

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