《MUMEI》 奴らが来るまで「そんじゃ、まずは見晴らしのいい所で待ち受けるか」 「うん。一階じゃすぐに見つかっちゃうしね」 二人は職員室の中で見つけた段ボールに荷物を入れて、最上階の音楽室へ移動した。 ここからなら正門がよく見渡せる。 裏門は見えないが、おそらく奴らが来るのはユウゴたちと同じ正門からだろう。 「……ねえ」 ユキナは段ボールの中を眺めながら口を開いた。 「なんだよ?」 「ただ待ってるのも、時間がもったいないと思わない?」 「……見張り以外に何かすることあるか?」 「あるよ」 「へえ、なに?」 「罠作り」 ユキナはニヤっと笑みを浮かべて包丁を手に持った。 「罠?」 「そう。あいつらが入りそうな部屋に罠を仕掛けるの。いちいち接近して反撃してたら、いつやられるかわかんないし」 「そりゃそうだけど。二人してそんなの仕掛けてたら、あいつらが来ても気付かないだろ」 「だから、わたしが一人で仕掛けてくるから、ユウゴはここで見張ってて」 ユウゴは大きなため息をついた。 すでにやる気満々なユキナを止めることはできそうにない。 仕方なくユウゴは、マスターキーを手渡しながら「んじゃ、仕掛けるのは特別教室だけにしろよ」と言った。 「なんで?」 ユキナは不思議そうに首を傾げる。 「特別教室は準備室があるだろ。準備室には電話がある。外線は繋がらないけど、内線なら使えるだろ。奴らが来たら電話するから、今どこの部屋にいるのか報告しろ」 ユキナはユウゴの言葉を聞きながら、準備室の方へ顔を向け、そして頷いた。 「なるほど……」 「ついでに下の階から始めろよ。奴らが来た時、逃げやすいから」 「わかってる。じゃ、行ってくる」 ユキナは段ボールを抱えて部屋を出て言った。 「……全部持っていくのかよ」 何をするつもりなのだろうと、頭の中で考えながらユウゴはその後ろ姿を見送った。 前へ |次へ |
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