《MUMEI》
歩の代わり
   〜麗羅視点〜


どうしよう・・・。

怖くて体が動かない。


誰か助けて・・・。


その時ふと

村上の後ろに人影が見えた。


誰・・・?


そんなことを考えているうちにも


村上の顔は

どんどん近づいてきた。

人影は、走ってきたらしく

肩で息をしている。




・・・・・歩!?


どうしてここに居るの?

クラブに行ったんじゃなかったの?


どうして・・・?


私は、歩の顔を見た途端に

恐怖から解放され

村上を突き放した。


歩が、冷たい切ないそんな顔で

口を開く。


「麗羅チャン・・・。」

歩は、キュッと唇を噛み締め

反対を向き

去って行った。


歩!行かないで・・・。


私が歩の後を追いかけようと

走りだすと


村上が私の腕を掴む。


私はとっさに

『離して!!』っと叫ぶ。


「どうして・・・?」


『早く行かないと

歩がいなくなっちゃう!!』


「いいじゃん!

俺が、あいつの代わりに

ずっと側に居るよ?」


『・・・・・。

代わりなんていない。』


「えっ?」


『歩の代わりに

なれる人なんて

居ないって言ったの!!』


私は、村上の手を

振りほどき


歩の背中を追う。


大声をあげたのも

その人の代わりが

居ないって思ったのも

私には




初めてのことだった。

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