《MUMEI》 「最近毎晩見るの、白と黒の布が垂れ下がっててね、みんな泣いてた」 「うん」 「私の身体は棺の中に入っててね、花がいっぱいなの。もうまんまお葬式のイメージでさ」 淡々と語る口調に感情は読み取れず、ただ小さく低い声を、俺は仰向けのまま聞いている。 「‥‥それで?」 「私の身体が焼かれるのをみんな泣きながら見てた。けど私はちっとも悲しくないの。みんなが私のために泣いてるのに、私は泣けない。悲しくないの、よくわかんないけど」 「‥‥うん」 「それでさ、身体が完全に燃えちゃって骨になったころには、もうお父さんの顔やお母さんの顔までよく覚えてないの。頭がぼんやりして、ぐらぐらして」 「‥‥俺のことも覚えてねぇの」 「‥‥‥‥うん」 はじめて声に感情の揺らぎが表れた。 前へ |次へ |
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