《MUMEI》

二人は制服姿で、鞄も持っている。明らかに学校帰りだ。
いや、そういうことじゃなく。
何で俺の部屋の前に、俺の恋人と見知らぬガキがいるんデスカ?

「‥‥‥ざ、‥‥てくれ‥あり‥‥」
「‥‥よ、‥‥も‥‥しか‥‥」

声は聞こえるが、内容はよく聞き取れない。聞きたくない。
笑顔の恋人、笑顔の男、別れがたいのかずっと部屋の前で話している。
なぜか頭の奥がじんわり熱くなった。

俺の足は静かに階段をのぼりきり、そのまま歩きだした。
次第に近づくお互いの距離、まだ恋人は気付かない、まるで俺が他人であるかのようだ。
やがて男のほうが気付いた、俺を見て口を閉ざす、それを見て彼女も俺に気付く。

「おかえりー」

相変わらずにこやかな笑顔、しかしこの表情にこの上なくムカついたのは初めてだ。

「‥‥そいつ、誰だ?」

挨拶には応えず、あくまで静かに穏やかに、口の端に笑みなんて浮かべたりして、だってそうだろ、そうでないと今にも爆発しそうなんだよ。
なぜか男が怯えている。ブレザーに重そうなスポーツバッグ、顔にはやや幼さが残る。いかにも爽やかそうな雰囲気、青臭い。

「あー、この人は同じクラスの風見って人で‥‥」

「それでその風見くんが何の用?」

「ちょ、そんな言い方ないでしょー!風見くんはあたしのこと送ってくれたんだよ」

「あっそ。じゃさっさと帰ったら?もう用事すんだんだろ?」

「何でそんな言い方すんの!」

いつも律儀で他人に優しい恋人は怒っている、でも嫉妬深い俺はもっと怒っている。
ん?と小首をかしげ、怯えた顔の男を見る。
しかし怯えの中にある種の決断のようなものが見えた気がした。

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