《MUMEI》

「え、だって俺いつも慰めてるから」

俺いつも慰めてるから。
ガツン、と頭を殴られたような衝撃。
いつも慰めてる、誰が?コイツが。誰を?アイツを。いつも?
コイツがいつもアイツを慰めている?

ははは、そういうことか。この10日間何でアイツがほとんど俺に弱音吐かなかったかわかったわ。俺に気を遣ってとかじゃなく。単にコイツに全て吐き出してただけで。
うわ、すげぇ勘違い、すげぇはずかしいなコレ。アイツのこと全てわかってるつもりだったのに、要は信用されてなかっただけか。


「じゃ、俺、帰ります」
男は黙りこんだ俺に気をよくしたのか、俺の横をすりぬけて階段を降りていく。
「あ、風見くん、またね!」
あわてて背中に手をふる恋人。
やべ、俺泣くわ。

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