《MUMEI》

とりあえず水でも飲もう、小さめの冷蔵庫をあける。
ミネラルウォーターのペットボトル、むさぼるように飲む。
カタカタ、うるせぇ、何だ?ペットボトルが、冷蔵庫の把手が、震えている、あ、震えてるのは俺か。

「‥‥はは」

誰もいない部屋、小さな笑い声は壁に吸い込まれて消えた。
知ってる、こういう状況って『失恋』てやつだ。
アイツが死ぬまでの時間をずっと一緒にすごすつもりだった、なぜこんなことになるのだろう。
アイツのことをこれっぽっちわかっちゃいない、俺なんかにアイツと住む資格なんざない。

胸が痛い。

昨日足を踏み入れた暗い穴底は、今日も口を開け俺の片足を咀嚼している。長い長い時間は、俺だけを外の世界から隔絶していた。

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