《MUMEI》
野蛮な隣人 4
数日すると、夫はまた出張に出かけた。千香はやや不満だったが、夫の給料が高いため、自分は専業主婦でいられる。それに、遊びにも寛大で、宿泊はできないが、日帰りでプールに行くのは全然平気らしい。

千香は水泳が好きで、よく一人でプールに出かけた。ひと通り泳ぎを堪能すると、パラソルの下で日光浴。オレンジ色のビキニは少し派手かと思ったが、女は度胸。勇気を出して寝転がった。

男の熱い視線を四方八方から感じる。ちょっぴり怖いこの緊張感がたまらない。千香はドキドキ感を楽しみながら、そ知らぬ顔をして仰向けに寝たり、うつ伏せに寝たりして、魅惑的な水着姿を披露した。

(あたしって、不良主婦?)

結婚している同世代の友達は皆、スーパーなどでほぼフルタイム働いている。それを考えると夫に感謝しなければいけない。平日の昼間にプールとは贅沢な主婦なのだ。

24歳だから独身の友達のほうがまだ多いが、もちろん皆働いている。だから時間が合わない。しかし、一人で行動することは別に苦ではなかった。

千香は、仰向けに寝転がって目を閉じていたから、男たちが近くに来ていたことに気づかなかった。

「君一人?」

「え?」

目を開けると、10人の若い男たちに囲まれていて、ドキッとした。

「何ですか?」

「一人って聞いてるんだよ」

「違いますよ、家族と一緒です。主人と子どもと」

とっさに嘘をついたが、男たちは笑った。

「一人だろ。嘘つくなよ」

「へえ、主婦なんだ。見えないね」

「独身に見えるよ」

「それにしてもいい体してるじゃん」といきなり千香のおなかを触る。

千香は目を丸くして怒った。

「ちょっと、何触ってるんですか?」

「いいじゃん、おなかくらい」

「よくありません」

「そういう生意気なこと言うと股を触るよ」

千香は怯んだ。厄介な連中に絡まれてしまった。ここは穏便に済ませたい。

「あの、あたしに何か用ですか?」

「正直言うとナンパなんだけどさあ。俺たちと食事行かない?」

「ごめんなさい、ちょっとそれは、無理です」

千香が断ると、男たちは何を思ったか、彼女の両手両足を押さえつけた。

「きゃっ・・・待って、何をするんですか、ちょと離してください」

セクシーな水着姿で身じろぎする若い主婦。絵になる。男たちは興奮した。

「名前何て言うの?」

「嘘言ったら裸にするよ」

「え?」千香は焦った。

「名前を聞いてるんだよ、答えな」

悔しい。脅されている。

「よし、じゃあ、水着上下とも取って逃げちゃおうぜ」

男たちは千香のビキニの紐を引っ張る。

「待って、答えるから!」

慌てる姿がかわいい。男たちは調子に乗った。

「答えな」

「千香です」

「チカちゃん。かわいい」

「チカ。もしも水着奪われてさあ。スッポンポンのまま置き去りにされたらどうする?」

恐ろしいことを言う。でもヘタに逆らわないほうがいい。本当にそんな意地悪をされたらアウトだ。

「え、そんなことされたら困ります」

「困っちゃう?」

「困ります。絶対やめてください」

「でもチカみたいなイイ女の困り果てる姿って見てみたいよね」

そう言うと、また水着の紐を引っ張ろうとする。

「やめて、やめてください」

係員でも誰でもいいから、早く助けてほしかった。

「どうする、この子?」

「素っ裸にしちゃおうか」

「やめて」

「おい、テメーら何してんだよ?」

後ろから野太い声が聞こえたので、男たちは振り向いた。そこには凶暴そうな大男が立っている。真壁万勢だ。千香は驚いた。

(真壁さん・・・)

男たちは焦った顔をすると、小声で「行こうぜ」と呟き、そそくさと去っていった。

千香は上体を起こすと、真壁に頭を下げた。

「ありがとうございます。助かりました」

「ナンパされてたの?」真壁は親しげに話すと、千香の隣にすわった。

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