《MUMEI》
野蛮な隣人 5
海パン姿の真壁万勢は、見事にビルドアップされた肉体を誇っている。千香は感心した。まるでプロレスラーのような屈強さだ。女は逞しい男に弱い。もちろん個人差はあるが、千香も筋骨隆々とした男は好きなほうだった。

「真壁さん、本当にありがとうございました。どうしようかと思った」

怖がる顔がかわいい。真壁は笑みを浮かべて話した。

「千香チャンは私服でもかわいいのに、水着姿じゃ男が放っておかないだろう。イイ女は気をつけないと」

褒めちぎりに遭い、千香は照れた。くすぐったいような、嬉しいような。でも真壁の目線が気になる。無遠慮に水着姿を直視し、胸やおなかや脚を見回す。

これは女性に対して、結構失礼な行為なのだが、恩人なので千香は我慢した。

「後日、正式にお礼に伺います」

「そんな大袈裟だよ」

「でも、主人にも・・・」

そこまで言うと、真壁は千香の言葉を遮った。

「あっと、旦那には言わないほうがいい」

「なぜです?」

「男心がわかっちゃいないな、奥さん」

野蛮人のような喋り方に緊張したが、千香は素直に話を聞いた。

「俺だったら、自分の女が別の男に危ないところを助けられたと知ったら、そりゃあお礼はするかもしれねえけど、いい気分はしねえな」

「そういうもんですか?」

「そういうもんよ。男はライオンだからな。常に自分が守りてえのよ」

「へえ」千香は感心した笑顔で真壁を見つめた。

「俺が用心棒になってあげたいが、旦那が嫌がるだろうからな。まあ、気をつけな」

「はい、ありがとうございます」

真壁が立ち上がると、千香も立って深々と頭を下げた。



「ふう」

海ならともかくプールであんな柄の悪い連中にナンパされてしまうとは。千香は怖いので帰ろうと思った。しかし、「マッサージ」という看板が目に入り、彼女は立ち止まった。

「マッサージ?」

人一倍感度がいい千香は、マッサージが大好きだった。せっかく水着だし、マッサージを受けてみたくなった。

「すいません」

店に入ると、真壁よりも長身の金髪の男がいて、千香はやや驚いた。

「あ、今なら待ち時間なしにマッサージ受けられますよ」

「あの、どういうマッサージなんですか?」

「店長の岡田です。よろしく」

まだ若い。二十代に見える。岡田と名乗った長身の男は、笑顔で握手を求めてきた。千香も手を握り返す。

「お名前は?」

「福井です」

「福井、何さん?」

「千香です」

岡田は、大きなマッサージ機を持ち上げて見せた。

「理容室なんかで肩や脚をマッサージする機械なんだけど、これで全身をマッサージするんですよ」

「へえ」

全身というのが少し気になり、千香は聞いた。

「全身って、全部ですか?」

「全身って言っても、両腕、両脚、あとは腰と背中と肩くらいかな」

健全なマッサージだということを確認すると、千香は笑顔で言った。

「じゃあ、やります」

「千香さんはキレイだから無料にしたいけど、30分2000円で」

「安いですね」

岡田は千香の眩しいばかりの水着姿に見とれた。顔もとびきりにかわいいし、澄んだ瞳がたまらない。豊かな胸。セクシーな美ボディ。見事な美脚。思わず犯したくなる魅惑的なレディだ。ポニーテールが決まっている。

「じゃあ、うつ伏せに寝て」

「はい」

千香はうつ伏せになり、枕を抱いた。ちょうどいいヒップだ。浣腸していじめたくなる。そんな邪悪なS心を隠し、岡田は爽やかボーイを演じて、千香の脚をやさしく触った。

「キレイな肌してますね」

「え、ホントですか?」

「モテるでしょう」

「モテませんよ、主婦だもん」

岡田は目を丸くする。

「嘘、結婚してんの?」

「はい」

「何だ、人生は思うように行かないね」

「アハハ」

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