《MUMEI》
露出願望 3
千香は、真壁の太い腕を両手でつかみ、哀願した。

「お願いします。主人に言うのだけは勘弁してください、この通りです」

真剣な表情で頭を下げる千香があまりにも魅力的で、真壁はこの場で押し倒したくなった。

「どうしようかな。見てしまったもん、同じ男として黙ってられねえな。俺は口軽いからなあ」

「お願いします、真壁さん」

必死に哀願する千香。真壁はわざとらしく腕組みをして首をかしげながら考え込んでいる。

「じゃあ、千香チャン。俺ともデートしてくれたら黙っててあげてもいいぜ」

そんな。どいつもこいつも、ゆすり屋か。千香は呆れたが、仕方なく返事した。

「わかりました。誘ってください」

「おお、楽しみにしてるぜ。俺はこんなもんチクッたって、何の得にもならねんだから」

真壁は嬉しそうに千香の肩を叩くと、店を出ていった。

「はあ」

千香は溜息交じりにテーブルに戻った。今度は岡田がムッとしていた。千香はヒヤッとすると、顔を紅潮させて岡田の逞しい腕を両手でつかみ、頭を下げた。

「待たせてごめんなさい。怒らないで」

「かわいい!」

先手を打たれて、岡田は思わず感激の笑顔だ。千香はホットすると、席に着いた。

「大丈夫だった?」

「どうかな」千香は不安な顔色で首をかしげた。

「もし困ったことがあったら、俺に相談しな。助けてあげるから」

「はい」

何と岡田は、ホテルや自分の部屋に誘うこともなく、千香を解放してくれた。彼女は驚いた。どうやって断ろうかと思っていただけに、奇跡的なことのように思えた。

しかし、あっさり帰してくれたので、今後はもう会えないとは言えなかった。最後だと思うと、思いを遂げようという気になるかもしれない。それは怖い。



千香は家に帰り、自分の頭の中を整理した。自分はMなのか。女でMは別におかしくない。Sだとは思わない。やはりMなのかもしれない。

Mは、岡田の言うように、自分の裸を人に見られたいという欲望があるのだろうか。夫や恋人は、裸を見られても不思議ではない相手だから、興奮の対象にならないのか。

もちろん、他人に全裸を見られてしまうことは、たまらなく恥ずかしい。しかし、晒し者の刑に遭った時の感情を、冷静になった今、よくよく振り返ってみると、確かに凄く興奮していた。あれは非日常の興奮状態だ。

そういえば、極悪痴漢集団に嬲りものにされた女性警察官は、その後Mの欲望に溺れ、犯人の虜にされてしまうのだが、千香は険しい表情をして唇を噛んだ。

「あたしは、そうはならないわ」

岡田が怖いから弱気な女を演じているだけで、女性にあんな酷いことをする男を、好きなわけがない。千香は自分に言い聞かせ、気持ちを確かに持った。

それより気になるのは真壁万勢だ。あの目線から、自分の体を狙っている気がして怖い。あの屈強な巨漢に力で襲われたら防ぎようがない。

とにかく真壁の部屋やホテルなど、密室に二人きりで入るのは禁物だ。犯されてしまう。容赦なくレイプしそうな野蛮人に見える。

「あっ」

真壁に襲われている妄想をして、千香は下半身が疼いた。

「嘘・・・」

これでは岡田の言う通りになってしまうではないか。千香は快楽の海に溺れそうな自分に気合を入れた。

「絶対ダメ。女がしっかりしないと。男は何も考えてないんだから」

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