《MUMEI》
露出願望 4
千香は、真壁万勢に誘われて、仕方なく二人きりで食事をした。いきなり焼肉屋だ。獰猛な肉食動物は怖い。緊張感があるのは刺激的で悪いことではないが、身の危険を感じるレベルまで行くのはどうなのだろうか。

真壁の仕事も不明。聞くのが怖い。悪いことをしている人なら、知らないほうがいい。

「真壁さんは年齢わからないですよね?」

「あれ、千香チャンはいくつだっけ」

「24歳です」

「そんなに離れているのか。俺は41だ」

「へえ」

「どういう、へえだ?」

「いえいえ」

千香はキュートなスマイルを向ける。真壁も千香が楽しそうだと嬉しそうだ。

焼肉屋では、真壁が十人分を軽く平らげた。ビールもガンガン豪快に飲みまくり、顔が赤くなる。酔っ払いと化すのは怖い。これで割り勘は合わないということで、全部ご馳走してくれた。

店の外に出ると、千香は言った。

「ご馳走さまでした」

「じゃあ、少し休んで行くか」

「喫茶店ですか?」

「違うよ、休むってホテルのことだよ」

ついに来た。千香は焦った顔をすると、歩きながら言った。

「ホテルには入りませんよ」

「バカ、何もしねえよ」

「それは信じろというほうが無理ですよ」

笑いながら逃げ腰の千香に、真壁は口説きにかかる。

「大丈夫だ。俺を信用しろ。絶対に変なことはしないから」

「絶対するよ」

「しない、しない」

「だって、力で来られたらどうにもならないもん」

口をすぼめる千香が魅惑的だ。真壁は燃えた。

「指一本触れねえよ。俺は紳士だぞ」

喋りながら、どんどん人通りのない道へ追いやられ、よく見るとホテル街に入っていた。

「え?」

「いいじゃん、ちょこっと休憩するだけだから」

「ダメです。きょうは帰ります」

真壁は暗い顔をすると、独り言のように呟いた。

「じゃあ、仕方ねえ。旦那に言うか」

「それは卑怯ですよ」

「何が卑怯だ」真壁は怒った。「あの男とは寝たのか?」

千香は一瞬怒ったが、口論は良くない。静かに反論した。

「あの人とは食事だけです」

「嘘だね。何回した?」

「そういうこと言うと軽蔑しますよ」

睨む千香に、待ってましたとばかり、真壁はいきなり彼女を抱き上げた。

「きゃあああ!」

そのままホテルに入る。千香は本気で怒った。

「ちょっと下ろして、下ろして」

真壁は千香を下ろす。千香は逃げようとしたが腕をつかまれた。

「おっと、これ以上俺に恥をかかせるならボディーブローだぞ」

「わかったやめて」

女が気を失うのは非常に危険だ。寝ている間にレイプされたらアウトだ。千香は作戦変更を余儀なくされた。真壁が野蛮人に変身する前に、人間性に訴えるしかない。

「真壁さん。本当に何もしませんか?」

「当たり前だ。俺が嘘ついたことあるか」

「じゃあ、あなたを信じます。その代わり、約束を破って変なことしたら、離婚覚悟で警察に行きますから」

ムッとした顔もかわいい。真壁は笑顔で言った。

「構わないぜ。俺はちゃんと約束を守る男だから」

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