《MUMEI》
露出願望 5
真壁は画面を見て部屋を選び、受付でキーをもらうと、千香と一緒にエレベーターに乗った。慣れている感じがした。千香は胸のドキドキが止まらない。

502号室が点滅している。真壁は鍵を開けると、部屋に入った。千香は神妙な面持ちで入口に立つと、囁くような声で言った。

「真壁さん」

「ん?」

「ここで、もう一度だけ約束してください。絶対に変なことはしないと」

「しねえよ。いいことしかしねえよ」

「ダメですよ、そういう曖昧な言葉で誤魔化そうなんて」千香は唇を尖らせる。「何もしないと約束してください」

真壁はじっと千香を見ていたが、笑った。

「わかったよ。じゃあ、セックスは絶対にしない。これでいいか?」

「はい、お願いします。信じてますから」

真壁は冷蔵庫からビールを出すと、グイグイ飲んだ。

「うめえ」

「強いんですね」

「千香は?」

「あたしはあんまし」

千香は落ち着かない様子でソファにすわった。真壁は隣にすわると、無遠慮に千香の胸や脚を見る。

「千香。シャワー浴びてきな」

「浴びませんよ、何言ってるんですか」千香は笑顔で赤面する。

「いいから」

「何で浴びる必要があるんですか」

警戒する千香に、真壁は言った。

「飲んだあと入浴はよくねえだろ」

「ああ・・・まあ・・・」

それでも躊躇する千香に、真壁はいじけて見せた。

「何だ、結局俺は信用されてねんだな」

「信用してますよ。信用してなかったらホテルに入るわけないじゃないですか」

「いいぜ、いいぜ。ここまで軽蔑されてるんなら、いっそのこと務所暮らし覚悟で、暴走しちまおうかな」

千香は焦った。冗談だろうか。本音だったら危ない。ホテルの中は完全に密室。襲われたら逃げ道はない。それに、自分の意思でラブホテルに入った時点で、たとえ犯されてもレイプは成立しない。

ここに入るということは、セックスが目的で入ると世間は取る。「何もしないと約束したから」は、法廷では通らない。

脅迫や暴力的威圧の事実が認められた場合、レイプは成立するが、千香は明らかに自分の意思で入ったので、強姦罪にはならない可能性のほうが高い。

「何ぼんやり考え込んでんだ?」

「真壁さん。あたしがシャワー浴びて、浴衣姿で戻ってきても、絶対に変なことしないと約束してくれますか?」

「もちろん。あ、でも浴衣じゃなくてバスタオル一枚だぜ」

「それはおかしいですよ」千香は思わず笑った。「バスタオル一枚で出てきたら、それはもう挑発じゃないですか」

「甘いな。俺は無類の浴衣マニアだぜ。夜店や花火大会の日でも浴衣ギャルを犯したくなるほどの浴衣マニアだ。いいぜ、そんな俺の目の前に浴衣姿で現れるならどうぞだ」

危な過ぎる。やはり野蛮人だったか。

「バスタオルのほうが安全ってことですか?」

「そういうことだ」

「ホントに、もう」

千香は呆れた顔をすると、バスルームに行った。凄く怖い。緊張する。ハラハラドキドキする。しかし、これは今の夫との恋愛で、味わったことがない刺激的な時間だ。

夫以外の男と二人きりでホテルに入る。この時点で完全に浮気だが、シャワーを浴びてバスタオル一枚の姿で、真壁のような屈強な男の前に身を晒す。

これがどれだけ危険なことか、千香にはよくわかっていた。子どもではないのだ。だが、同時に下半身がキュンと疼く感覚がたまらない。

「やっぱりあたし、おかしいのかな?」

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