《MUMEI》 SMホテル 2ラブホテルに到着。男はホテルの駐車場に車を入れる。何度も来ているホテルなのだろうか、慣れた感じに思えた。 千香は受付の前にある写真を見て、ここがSMホテルであることに気づいた。小田切は熱心に部屋を吟味している。危ない男だ。千香はすましていたが、膝の震えが止まらない。 305号室に入った。千香は神妙な顔で言った。 「小田切さん」 「何?」 「酷いことはしないって電話で言いましたよね」 「言ったっけ」 「言いました」 小田切は笑うと、冷蔵庫からビールを出す。 「まあ、すわって。夜は長いんだから」 「あ、泊まることはできません」 「そういうこと言うと不良少年を大勢呼んじゃうよ」 「わかったやめて」千香は両手を出して即答した。 千香はソファにゆっくりすわった。グラスにビールが注がれる。 「どうぞ」小田切がすすめる。 「いただきます」 千香はビールをふた口飲んだ。小田切はコーラを飲んでいる。車だからか。意外に常識人なのか。主婦を脅迫する悪党にしては、ギャップがある。 「千香」 「はい」 「あれ、呼び捨てにしないでって絡まないの?」 「怖いから」 顔を紅潮させている千香の横顔が美しい。小田切は見とれた。本当に美人でかわいい。早く裸にして、もう一度彼女の全裸が見たい。 「シャワー浴びてきな」 「あ、飲んじゃったから」 「そんなに不良少年が好きか」 脅しのプロだ。 「年下のガキにいたぶられるのは悔しいでしょう?」 千香は立ち上がると、言った。 「シャワー浴びてきます」 「バスタオル一枚で出てきて」 「浴衣じゃなくて?」 「千香の浴衣姿を見たら犯したくなるけどいい?」 この男も浴衣マニアか。それともバスタオル一枚で出てきてほしいから、そういう嘘で脅しているのか。いずれにしても乙女の危機というか、主婦の危機だ。 前へ |次へ |
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