《MUMEI》

揺れていた友人の身体がぴたりと止まる。男にしては大きい目がさらに大きくなった。

「何にも言われてないのにフラれたの?殴られたとか?」

「それもない」

「ワケわかんね。一体どーやってフラれたんだよ」

俺は先日のことを話した。
すると最初はワクワクフェイスをしていた友人の顔が、どんどん呆れたようになる。

「・・・・そんだけ?」

「そんだけ、ってお前」

「てかさ、ソレ晴香ちゃんからしたらさ、ワケわかんないんじゃね?」

「何で」

「だって友達に送ってもらって帰ってきたら、彼氏が理由もいわず機嫌悪くて、オマケに“顔みたくない”でしょ?ただの嫉妬深い彼氏じゃん」

「‥‥」

「逆にお前が晴香ちゃんの立場だったらどーよ。束縛するな、と思わない?それにさ、あのくらいの女の子なら平気で男の友達はありえると思ってるぞ。オトコは違うかもしれないけど、女の子は男の親友だってアリらしいし、相談したって不思議じゃないじゃん。あのね、以心伝心なんてまやかしなんだからね。そりゃお前は晴香ちゃんのことでいろいろ悩んでたんだろうし、もっと話してほしかったのかもしんないけどさ、晴香ちゃんにソレ言ったことあんの?」

息もつかずに一時一句正論、思わずむせかえる友人は大きく息をついて、マルボロを口にくわえた。まとまりのないところがいかにもらしい。

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