《MUMEI》 磔 1逆らうこともできず、千香は小田切の車に乗り、別荘に連れて行かれた。楽しそうにはしゃぐのは、自分の身を守るためだ。沈んだ表情は禁物。Sでエッチな意地悪は場所を選ばない。全裸のまま野外に置き去りにされたら終わりなので、彼女は明るく振る舞った。 別荘に到着。広い別荘だ。本当にプールがあった。小田切から白のビキニをプレゼントされた千香は、水着を身につけてプールで泳いだ。 セクシーな白のビキニは小田切の好みなのだろうか。千香が泳ぐのを小田切はイスにすわってながめている。 「ふう」 千香はプールから上がると、テーブルの上にあったオレンジジュースを飲んだ。 「小田切さんは泳がないの?」 「千香を見ているだけで満足だ」 眩しいばかりの水着姿に、小田切は本気で興奮し、感動していた。 「千香。あれを見な」 「あれって?」 小田切が指差すほうを見ると、プールサイドに十字型の磔台があるのが見えた。 「何考えてんの」 「X字もあるぞ。どっちがいい?」 「どっちもヤダ」 ムッとする千香がかわいい。小田切は立ち上がると、千香の腕をつかんだ。 「やめて」 「いいじゃん」 「ヤダ」 千香は嫌がったが、小田切は強引に彼女の体を十字の木に押しつけた。 「磔にされたらどういう気持ちになるか、興味あるだろ?」 「ありません」 「大丈夫。1分でほどいてあげるから」 「絶対嘘だよ」 何の抵抗もなく縛られるよりは、嫌がり、抵抗されるほうが燃える。 「千香。言うこと聞かないなら羞恥プレイしか待ってないぞ」 「どんな羞恥プレイ?」 「車のボンネットに水着姿のまま手足を縛ってドライブだ」 千香は赤面すると、おなかに手を当てた。 「そんなことしたら絶交だよ」 「ハハハ」 千香も磔に興味がないわけではないが、水着姿で無抵抗にされたら、意地悪をされるに決まっている。ビキニを取られ、とことんいじめられてしまう。 しかし、そんなことを妄想して千香は興奮してきてしまった。岡田と真壁と小田切に無理やりMにされてしまったのだ。 「絶対エッチな意地悪をしないと約束してくれますか?」 「もちろん」 「じゃあ、1分だけね」 千香は、約束を破られることを百も承知で両腕を水平に上げた。小田切は千香の両腕両脚を拘束する。水着姿で磔にされ、千香は身じろぎした。 「これは・・・メチャクチャ怖いね」 「怖いだろ」 その時、別荘の近くに爆音が轟く。暴走族だ。 「外して」 「大丈夫だ」小田切は無責任に笑う。 「早く外して!」 千香が怖い顔で怒鳴ると、小田切も真顔になった。 「何怒鳴ってんだよ」 「怖いでしょ。見えるよ外から」 「大丈夫だ。ここまでは来れないよ」 だが、次の瞬間、ドアが開く音がして、小田切も青い顔をした。 「あれ、オレ、ドアの鍵かけ忘れたか?」 何を悠長なことを言っているのか。千香はもがきながら言った。 「お願い、ほどいて」 「ちょっと様子を見てくる」 「あたしを先にほどいて!」 千香は大きい声を張り上げたが、小田切は行ってしまった。 「信じられない」 前へ |次へ |
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