《MUMEI》
磔 3
「チカ?」

「漢字を一発で当てたら一発やらせてくれるっていうゲームはどう?」

ここで先に漢字を言ったら水着を取られる気がした。千香は一か八か、賭けに出た。

「あの、じゃあ、一発で漢字を当てられなかったら、ほどいてくれますか?」

「おおお!」

予想外の切り返しに、男たちは燃えた。

「そう言うってことは、当てられない自信があるんだろう?」

「変わった漢字なのかなあ」

「でも、嘘言われても俺らにはわかんねえじゃん」

「あ、こいつそれ狙ってんだ!」

千香は早口に言った。

「違います。そんな嘘はつきません。ほどいてくれたら、免許証を見せます」

「よーし」

男たちは少し考えてから、一人が言った。

「裏の裏をかいて、せんに、香りで千香だろう?」

千香は唇を噛むと、両目を真っ赤に腫らした。

「・・・当たりです」

「おおお!」

千香は絶望的な表情で俯いた。磔にされたヒロインが敵に嬲られるのは必定。オモチャにされることを覚悟したヒロインが、磔にされてうな垂れるシーンは、アニメでもよくある。男たちはそれを思い出し、エキサイトした。

「千香。年はいくつだ?」

「・・・24です」

「何だ、俺より5コも上か」

年下の不良少年に嬲られるのは悔しい。しかし今は年上年下と言っていられる場面ではない。

「千香。漢字を当てたら一発やらせてくれるっていう賭けに負けちゃったけど、どうするつもり?」

「できることならば、許してほしいです。許してくれたら一生恩に着ます」

「かわいい!」

小田切は黙っている。不良少年は千香に質問する。

「千香チャン。あの男とは、夫婦?」

「あ、違います」

「恋人?」

「・・・はい」

不良たちは淫らな笑顔で迫る。

「じゃあ、レイプされてたわけじゃないんだ」

「・・・はい」千香は、か細い声で答えた。

「てことは、もしかしてSMプレイ?」

恥ずかしい。だからすぐにほどけと言ったのに。小田切に対しての怒りも湧いてくる。

「それとも無理やり縛られたの? だとしたらこの男を半殺しの目に遭わすよ」

自分だけ助かるのは卑怯だ。千香は赤面しながら言った。

「無理やりじゃありません」

「SMプレイ?」

「はい」

「千香チャンはMなんだ?」

千香が黙っていると、一人が水着の紐を引っ張る。

「あああ、待ってください、待ってください!」

慌てふためく千香がかわいい。水着姿で怯える年上の美人を見て、不良少年たちは心身ともにエキサイトして暴走しそうだった。

「千香。待ってって言うから待ってあげてんだぞ。それとも素っ裸にされたいのか?」

「やめて」

「じゃあ、答えな。千香はMなのか?」

「はい」答えたあと、かわいそうに顔が真っ赤だ。

不良少年は危ない笑顔で千香のおなかを触る。

「あっ・・・」

「Mなら犯されるの好きだろう?」

「好きじゃありません」千香はまた泣いてしまった。「それだけは絶対にやめてください。一生のお願いです」

泣きながら哀願されると、僅かな良心がくすぐられる。女が水着姿のまま手足を拘束された状態で、暴走族に囲まれる。それがどれほどの恐怖かは、少年たちにも想像できた。

「千香。泣くなよ。俺たちだって野蛮人じゃないんだからさあ。そんな酷いことはしないよ」

「そうだよ。真っ裸にして回すくらいだよ」

「え?」

「おい、そういうこと言って脅しちゃダメだよ、かわいそうだろ」

「うるせえ、自分だけいい子ぶるなよ」

不良たちは笑いながらチョップ合戦。

「あとで独り占めにする気か?」

「千香チャンなら独り占めにしたいな」

その時、ずっと黙っていた小田切が、急に口を開いた。

「レイプだけは勘弁してあげてくれ。その子には旦那がいるんだ」

(バカ!)

そんなことバカ正直に言う必要はないのに。何を言っているのか。千香は蒼白になって震えた。

「旦那?」

「どういう意味?」

不良少年たちは小田切と千香を交互に見ると、千香を見て言った。

「もしかして不倫?」

「あ・・・それは・・・」

人生終わったかもしれない。回される。

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