《MUMEI》

「言ってないならホントただの横暴な彼氏だかんね。全然彼女のこと考えてないじゃん」

ピンク色の100円ライターを細い指がする、小さな火、くわえたまま近づけて点す。

「あつしは、思慮深いし頭イイけど、考えすぎだし、おんなじくらい考えナシだわ」

吐き出す煙、ゆらぐ煙の向こう側の光景には、おきっぱなしの彼女の荷物。

俺は複雑な気分だった。
今まで彼女のことを大切に思っていた自分は嘘じゃない、断言してもいい。
ただ俺とアイツの間に溝があったのも事実だ。
弱さや不安を見せてほしい俺と、弱さや不安を見せたくない彼女。
その間にある溝は救いようがないが、決して悪意のあるものではない。

「彼女が好きで彼女はねのけてたら世話ないね」

「‥‥まったくだな」

まったくだな。
俺は呟いた。まったくだ。

大事なのは彼女が好きだということなのだ。

簡単すぎて笑える。
馬鹿馬鹿しい。

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