《MUMEI》 「言ってないならホントただの横暴な彼氏だかんね。全然彼女のこと考えてないじゃん」 ピンク色の100円ライターを細い指がする、小さな火、くわえたまま近づけて点す。 「あつしは、思慮深いし頭イイけど、考えすぎだし、おんなじくらい考えナシだわ」 吐き出す煙、ゆらぐ煙の向こう側の光景には、おきっぱなしの彼女の荷物。 俺は複雑な気分だった。 今まで彼女のことを大切に思っていた自分は嘘じゃない、断言してもいい。 ただ俺とアイツの間に溝があったのも事実だ。 弱さや不安を見せてほしい俺と、弱さや不安を見せたくない彼女。 その間にある溝は救いようがないが、決して悪意のあるものではない。 「彼女が好きで彼女はねのけてたら世話ないね」 「‥‥まったくだな」 まったくだな。 俺は呟いた。まったくだ。 大事なのは彼女が好きだということなのだ。 簡単すぎて笑える。 馬鹿馬鹿しい。 前へ |次へ |
作品目次へ 感想掲示板へ 携帯小説検索(ランキング)へ 栞の一覧へ この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです! 新規作家登録する 無銘文庫 |