《MUMEI》 器「待ってって!も少し話を聞いて下さいな〜。」 「…何ですか?また下らない話でしたら刻みますよ?」 「刻んだらダメでしょ。いや、今度は割と真剣な話でね。次の器はさっきシエナさんが殺したアイツにしようかと思って。」 「先ほどのやかましい猿人間ですか?」 「んー…そんな猿顔だったかな?」 「さあ?人間の顔などじっくり見るほどの価値はありませんので。」 「それはそうなんだけどね。顔はともかく…アイツ死ぬ間際ちょっと良い動きしてたでしょ? 動かすとしたらどんなもんかと思ってね。」 「どうということもないでしょう。私の初撃をああも簡単に受けたあたり、素人に鼻毛が生えた程度の実力でしょう。再利用の価値は皆無かと。」 「鼻毛かぁ。胸毛とかならきっと強かったろうに…って何の話だ!今は毛の話をしている場合ではないのだ!のだのだ!」 「…何ですか、その気持ち悪い語尾は。嘔吐しかねますのでやめていただけますか?もし、このまま続けると言うのであれば嘔吐物を若様の顔面にぶち撒けることになりますが…よろしいですか?」 「よろしくないね。非常によろしくないね。そんなことしたら俺も撒き散らすよ。お互いに吐きちらかして第五次スーパーゲロウォーズ始まるよ。」 「過去に四回もあったんですか?汚らわしい。…このゲロ魔王。」 「…。惨い。あんまりだ…。ってこんな汚い話をしたいのではなく!」 「要するに今の体を捨ててあの猿の体を利用したいという話でしょう?勝手にすれば良いではありませんか。その程度のことであれば私の許可など取る必要はありません。」 「いや…そのへんは解ってるんだけどね。一度、器を変えると次変えるまで結構時間かかるからさ。参考にシエナさんの意見も聞きたいな…っと思ったわけ。」 「私の意見は先程申し上げた通りです。あれは大して役には立たないでしょう。…ただ若様の今の器が相当ガタがきていて戦闘に支障が出るというのであれば…変えてみるのも手かもしれませんね。」 「う〜む…。悩み所ですな。今の分でももうしばらく大丈夫だとは思うけど…。」 ゾラは眉間に皺を寄せる。 「…何か気になる事でも?」 「最近やたら侵攻して来る人間ども…ま、あの程度なら問題ないね。運動不足に丁度良いってな。…ただ、ウルフ族の犬畜生どもがね。そろそろ仕掛けて来る頃じゃないかと…。」 「そういえばそろそろ満月ですね。ウルフ共の力が増す腹立たしい日…。まあ、毎月挑んで来ないところ、奴等にも僅かばかり脳味噌があるということでしょうが…。」 「どうだかね。本能的なものだと思うよ。 毎月来ようもんなら長期戦でこっちの勝ちでしょ。何せこっちは不死身だからね。どれだけ兵隊の数を増やし揃えようが無限じゃない。いつかはゼロになる。って、今さらシエナさんにこんな事言ってもね。」 「そうですね。そんな分かり切った説明を今更されても…。若様に対する殺意が増すだけです。イライラ度ランクアップです。 両耳…削ぎ落として良いですか?」 「駄目です。駄目なんです。暴力は何も産み出しません。平和にいきましょう。…せっかく治癒した肉体をまた傷付けられるなんて…嫌よ!断固拒否するわ!」 「…何故そこで女口調になる必要が…あー気持ち悪い。それと…いつの間に切断された首を繋いだのですか?…その再生力・スピードだけは魔王と呼ばれるに相応しいかもしれませんね。」 「フハハハッ!久しぶりに誰かに褒められた気がするよ♪嬉しいなったら嬉しいな♪」 その場でツイストダンスを披露するゾラ。 「眼球が腐りそうなのでおやめ下さい。これ以上自軍の兵力を削ぐような真似をしないで下さい。」 「え?皆見てたの?照れるじゃないか♪…ってダンスでダメージなんか与えられるかい!」 「…そろそろ無駄話を切り上げて城へ帰りましょう。器の切り換えやるならさっさと済ませてください。 私は先に戻っていますから。戻ったら第一魔王様に戦闘結果を報告してください。それと、人間どもの死体回収と武器回収。まだ動ける兵士の誘導もしっかりすること。これ以上兵力を落とすわけにはいかないのですから。それでは…」 スタスタと歩き去るシエナ。 前へ |次へ |
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