《MUMEI》

真夏の蒸し暑い真夜中。うっとうしい雨が降っていた。

良一は仕事も終わり、いつもどうり珈琲を買って車の中で煙草を吸いながら一息ついているとふとケータイがポケットの中で震えていた。

着信画面を見ると悪友の健太からの電話だった。

「はーい、どうした?」

「お前、仕事おわった?あのさ、俺んとこの職場の子でメール出来る人さがしてんだけど、お前この子とメールしない?」

「うーん、どうすっかなぁ…俺、夜中の仕事だしあんまり時間会わせて遊ぶとかできないぞ。それにメールとかめんどいからあんま送らねーし。」

「まぁそう言わず、メールだけでもしてみたら。あかりちゃんと別れてもう4年だろ?そろそろ新しい彼女作ったらいいじゃん。」

「うーん、まぁ考えとく。」

このようなやり取りが終わり、良一ははっきり返事をしないまま電話を切った。

この時、もっと自分の意思を強く持って断るべきだったんだ。この電話がこれから先の地獄の始まりだったとはこの時の俺には知るよしもなかった。

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