貴方の中の小悪魔
を知る神秘の占い

《MUMEI》
通り雨のち、晴れ。
アキの前にあるグラスは、もう空に近かった。

おかわりを注いであげようかどうか迷って居るうちに、アキはまた口を開いた。


「一度、諦めかけたんだけど、この2日後にどんでん返しが起きたんだよね」

「…どんでん返し?」

「うん。彼から電話が来た」


アキの涼しげな目が、穏やかになる瞬間を見た気がする。



「どんな内容だったの?」

少しでしゃばり過ぎかと思いつつ、詳細を急かしてみる。


「落ち込んでたあたしを気遣ってくれたみたい。でも、その時のあたしには『なんで余計なことするの!?』って感情にしかさせなかったけど」

「それは、目の前から一切居なくなって欲しかったってこと?」


「うん、嬉しかったけど…、ちょっと辛かった。でも話してるうちに、無理に抑えようとしてた気持ちが、また顔を出して来たんだ。『あぁ、やっぱり好きだなぁ…』って」


アキの気持ちとリンクして、わたしも複雑な気持ちになった。

寂しくて、驚いて、腹を立てつつ嬉しく幸せな気持ち。


これは、アキと出会った時の感情と少し似ていたかも知れない。

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