《MUMEI》 「岩崎ー?何して‥‥」 店長が不機嫌そうに奥に顔を出してきて、そのまま固まる。 「ど、どうしたの、顔真っ白よ」 「や、何でもないです」 「何でもなくないわよ、もう家帰りな」 そんなに調子悪く見えたのだろうか、無理矢理俺のエプロンを脱がし鞄を持たせるモンロー。 抵抗するのもめんどくさくて、俺は結局店を出た。 外は薄曇りで、3月も半ばだと言うのに冷たい風が頬を撫で寒々しかった。 アイツが消えた。 本当に消えた。 俺は一旦実家に帰り、本格的に彼女を探すべく対策を立てることにした。 好きだとか嫌いだとか、すれ違いとか、もはやそんな問題ではない。 こうして俺の長い長い一日は始まる―――― 前へ |次へ |
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