《MUMEI》

『あぁ、いつもお世話になっちゃって申し訳ないわねぇ!今もそっちにお邪魔してるんでしょ?ご迷惑おかけしていないかしら』

「あ。え、と‥‥はい」

『そーお?じゃぁいいんだけど。病院のほうはちゃんといってるのかしら』

「はい、先週一緒に行きましたから」

『あらそうなの、悪いわねぇ。たかだか注射と点滴打つだけなのにねぇ』

「いえ、とんでもないです」

『ホントにあつしくんはイイ子ね。主人はいい顔しなかったけど、あなたに晴香をお任せして本当に良かったわ!何かあったら連絡してくださいね』

「‥‥はい」

『それで何かご用?』

「‥‥いえ。何でもありません。失礼しました」

やっぱり家には帰っていないのか。帰ってたら帰ってたでヘコむけど、帰っていないということは比べものにならない。帰ってくれていたほうがましだ。
つぎつぎに浮かびあがる嫌ぁな想像、そんなはずないだろ、打ち消しても、まさか事故?そんな馬鹿な、俺のせいで、あいつは何処へ、

あいつは何処へいったんだ?

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