《MUMEI》

いない。
どこにもいない。

携帯を握りしめる手が汗ばんでいる。暖房もかけてないこの部屋は驚くほど寒々しく、指先は凍えていた。
充電器を拾い上げ、再び充電する。
力なくベットに座り込む。カチカチ、カチカチ、時計の音がうるさい。
じわじわと腐る足先を眺めていた、あの日穴ぞこに陥没した足は傷口からたらたらと無力な血を流している。動く気もしない、動かない。
何をしてるんだ俺は。

それでもアイツを放っておくわけにはいかない。こうなったのは全て俺のせいだ。もう会いたくない、お前なんか大嫌いだと殴られたって、俺は恋人への独りよがりの善意と嫉妬、横暴を謝りたかった。

行くしかない、よな?

俺は充電中の携帯を引っ掴み、外へ出る。

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