《MUMEI》
「完・成!武神○甲!」
「A・Tフィールドではないと何度言ったらわかるんだい?」
展開されたバリアフィールドの本当の名前は、神障壁。でもさ、俺が使うわけだからどんな名前でもいいじゃん。その方がやる気でるし。
胸ポケットにいるグルルヌが少しため息を吐いたようだった。
展開された神聖壁は襲い掛かる女子生徒達を一人残らず弾き、中へは侵入できない。
「絶対遮断空間の出っ来上〜がり〜」
この中には俺、伊桜、笹屋の三人だけだ。敢えてグルルヌは省く。
「な、なんだお前……!それ」
笹屋は驚愕している。説明めんどい。
「実は俺、勇者でしたー」
ブイッ!!とピースしてみせる。
「は、葉月ちゃん?これって………」
「ん?あ〜、細かい説明はあとな。今はとりあえず伊桜を守るよ」
その台詞の後に、伊桜の顔は紅潮した。その表情、グッときます。
「勇者だと………?ふざけやがって…………殺す!絶対に殺す!!」
「あまり強い言葉を使うなよーーーー弱く見えるぞ」
一度使ってみたかった台詞。その台詞で笹屋はぶちギレた。
「ぐおおおおおおおおおおお!!!!」
急激に肉体の活性と増殖が始まった。
パッと見、グロテスクで弾け飛びそうなくらい肉体が巨大化していった。
次第に巨大化は治まっていき、肌は黒々としていく。
「わー………うん、こりゃ悪魔だわ」
「ひぃっ」
勇者である俺が断言し、伊桜がドン引きするくらいの姿になった。
しかも背中には蝙蝠のような翼まで生やしている。
「殺す殺す殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺」
「ありゃ、完全に頭イッチャッテるじゃん」
四メートル程の巨人は目一杯右腕を振りかぶり、俺に叩き落とす。
その簡単な動作でも、ギリギリ目で追えたくらいの速さだ。
伊桜の制服の襟を掴み、後ろへ跳ぶ。勇者になってから、通常状態でも身体能力は向上していのだ。………さっきのゾンビ女子生徒には手刀きかなかったけどね。
「うおっ、地面めり込んでんじゃん」
巨大で俊敏で、その破壊力は一撃で殺されてしまうだろう。
だけど、このままみすみす殺されるなんて御免だ。
いくら面倒でも、自分や伊桜の命には代えられない。
金色に輝く指輪を空高く上げる。
俺にだって、変身くらいできる。
「うおおおおおおおおお!!」
指輪に神聖力を極限まで高める。白く力強い光が絶対遮断空間を照らした。
「卍 解」
その瞬間、指輪の形状が変化する。
その形状は、全身を包む防具と成った。
金色のアーマーを、手を加える事もなく、勝手に装着していく。
「完・成!これが武神装甲だ!」
「神聖鎧装だ」
ツッコむグルルヌ。無視する。
チラリと伊桜を一瞥すると、口をパクパクしていた。
うん、もう脳細胞オーバーキルだね。
さて、そんな伊桜のために、全力出してみようかな。

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