《MUMEI》 「操るのではなく、乗っ取り」「ミトメナイ」 笹屋から出たどす黒い霧。それは竜巻になって集合し、一瞬悪魔の姿を現した。 「コンナケッカ、ミトメナイ」 悪魔は霧散。再び竜巻となり、笹屋を覆い尽くした。 「なっ、笹屋!」 手を伸ばすが、時すでに遅し。 「フハハハハハハハハハ!!!」 声質は笹屋のものだが、明らかに様子がおかしい。 悪魔にとって、先程までのは前哨戦にすぎなかった。 竜巻の中から現れたのは、漆黒の衣で全身を包み、今までのオドオドしていた時とは考えられないような不敵に笑う笹屋だった。 いや、笹屋では、もうない。 「レヴィアタン」 グルルヌが呟いた。 「レヴィアタンって、あの?」 「知っているのかい?」 「七つの大罪を司る悪魔の一つだろ。確か、嫉妬」 「その通りだよ。悪魔は人の心の弱みを狙う。その方が体を操りやすいのだが、この悪魔は本質が違う。人の罪に漬け込んでくるんだ」 「あともう一つ違うことがある」 突然、レヴィアタンは口を開いた。咄嗟に臨戦体勢になった。 「操るのではなく、乗っ取るんだよ。頭の天辺から、足の爪先までな。つまりこの体は――――俺のものだ」 「あ?」 操るのではなく、乗っ取り。 つまり、悪魔に憑依された、ということか。 罪に漬け込んでくるということは、名前からしてレヴィアタンは嫉妬に漬け込んだのだろう。 笹屋と女子生徒の違いは、恐らくその操るのと乗っ取るの違いだ。文字通り《悪魔の囁き》によって伊桜に対する、羨望の裏に隠れていた嫉妬が表に出てきて操られてしまったのだろう。 なるほどなるほど。 笹屋や女子生徒達が悪いわけではないことは十分理解できた。 今になってグルルヌが新しい情報をくれたのも、とりあえず置いておく。 要はさ。 「お前をぶっ殺せばいいんだよな」 人の心を弄ぶたぁ言語道断! 「できるか?お前に」 「やってやるよ。…………あ、やっぱ今のなし。やぁぁってやるぜっっ!!」 「言い直したけど、たいして変わっていないような気がするんだが」 気分の問題だ。テンションの問題だ。 いちいちツッコむなグルルヌ。 前へ |次へ |
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