《MUMEI》
「我に断てぬものなし」
「あれはまさか………《淘汰の剣》かい………!?」
グルルヌが愕然とする。
「なんだその物騒なの。エクスカリバーだよ。今決めた」
「まさかここまで早く覚醒するなんて…………君は一体何者なんだ?」
「無視すんなよ………」
グルルヌとはいえ、無視されるのは悲しい。
「まぁ良いや。めんどいし」
カチャ、と剣を構える。
翼の生えた大きな羽虫は一匹で充分。
「我は如月葉月…………悪を断つ剣なり………!」
ギン、とレヴィアタンを射抜くほどに睨み、
「届けッ!!雲耀の速さまでッ!!」
ダッ、と走り、驚異的な跳躍力で飛んでいるレヴィアタンを越え、身の丈程の大きさを誇る両刃の剣を空を衝かんばかりに上げ、
「チェェェェェストォォォォオオオ!!!!」
怒号と共に、振り下ろした。
「なっ、速い………!」
意表を突いた。
レヴィアタンにはもう、回避する選択肢は使えない。
受け止めようと両手を上げるが、もう遅い。
我の《雲耀の太刀》を素手で受け止められるほど、甘くはない。
腕は切り裂かれ、やがて胴体をも真っ二つに裂いていく。
その間、わずか一秒すらいらない。
まさに、一刀両断。
大罪の悪魔の一人、レヴィアタンは今、ここに死す。
「そんな、バカなあっ!!この俺が人間ごときにぃいいい!!」
「終わりだ!レヴィアタン!!」
ムカつくからもう一撃。水平に振った刃はいとも簡単にレヴィアタンを切り裂き、十字に分かれた。
「ぐぎゃあああああああああ!!!」
やがて、悪しき霧は消えた。
その瞬間、レヴィアタンの気配も、消えた。
「我に…………断てぬものなし!」
「…………うんまぁ、勝ってくれるんなら、なんでもいいさ」
最後に茶々を入れるグルルヌ。それさえなければ決まってたのに!
「ん?…………………ああっ!」
そういえば俺、笹屋ごと斬ってね?
「さ、笹屋ぁあああああ!」
「笹屋疾人なら無事だろう。その淘汰の剣は生身の人間を斬ることはできないからね。…………基本は」
「おい最後に取って付けたのなんだ。一歩間違えたら斬れちゃってたってこと?」
そう考えると、超危ねえええええ。
黒い霧が消え、その中から五体満足の笹屋が現れた。十字に裂かれてたらどうしようかと思ってた。
どうにもこうにも、何とかこの嫉妬の悪魔、レヴィアタンとの戦いに終止符を打つことができた。
ほんともう、こんなことが続くなんて、考えられない。
だが恐らく、俺はもう後戻りはできない。
せめて見返りがあれば………と嘆く。
ん?見返り?
重要なことを忘れている気がする。
「――――――――あっ」
い、伊桜おおおおお!!

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