《MUMEI》
「つまり、できないということ」
さて、言い訳を考えるか。
伊桜に一連の戦いわ、目撃されていたわけだが。
誤魔化せると思うかな?
無理だっつの。
神聖鎧装を解くと同時に神聖壁も消える。
女子生徒達は倒れていて、軽くホラーだ。
「は、ははは、はづ、葉月ちゃん…………?」
それにしたって動揺しすぎな気もするが、そうでもない、かな?
「おおお落ち着け、落ちちゅくんだ」
俺も動揺してた。
「心配することはない」
ぴょこ、と胸ポケットからグルルヌが現れる。
「あ?」
信用ならないグルルヌの言葉に反応する。
「妖精天使の僕にかかれば記憶を操作することなんて造作もないんだよ」
どやっ、とグルルヌ。
むかっ、と俺。
「って、マジ?記憶操作できんの?便利だなそれ」
まあよくあるご都合主義ってやつですね。
「ん?ちょっと待て。なんか脳に障害が残ったりすることはないんだよな」
「そんなことあると思うかい?僕は妖精天使だよ?」
胡散臭いんだっつの。
空気読め空気を!
「とりあえず心配はいらないよ。しいて言うならば」
ん?と耳を傾けた時には既にグルルヌは伊桜の前に出ていた。
「ええ!?今葉月ちゃんから出てきたよねこのミ・フェラリオ!?」
「すげえマイナーなこと言い出したよ」
ミ・フェラリオなんて今時知ってる人は一握りだろうに。
予想通り伊桜は狼狽し、目の焦点はグルルヌに合わない。
「しいて言うならば、これ以降神聖力が効きにくくなるだけだよ」
そう言いながら、グルルヌのかざした掌が光り出す。
淡い光が伊桜の頭部を中心に巡る。
おいちょっと待てこいつ今なんて言った。
「これで終わりだよ」
とっても手早くて簡単だった。
淡い光は消え、伊桜の意識は夢の中へと誘われた。
「おいこれ以降神聖力が効きにくくなるってどういう意味だ」
倒れ込む伊桜を支え、グルルヌを睨む。
「そのままの意味だが」
は?
説明になってねーし。
「記憶を操作する以上、それが危険な行為だということは承知しているだろう?もしミスを起こしてしまえば彼女の脳はとてつもないダメージを負うことになるだろう」
「やっぱり危険があったんじゃねえか!」
とっさに握り潰そうと手を素早く伸ばすが、かわされてしまった。
なんなのこの羽虫!ほんといい加減にしないと咬み殺すよ。
「君は黙って聞くというのが苦手のようだね。最後まで聞くんだ」
ぐるるる………と威嚇。グルルヌは気にせず話を続けた。
「そのリスクを限りなくゼロにする方法があるんだ」
「限りなくゼロに?」
んだよそれ早く言えよなー。
「神聖力を脳に直接送り込むんだ。それにより対象の脳に神聖力の耐性が付き、ちょっとやそっと、少なくとも記憶を操作される程度ではまずダメージは負わないね」
「ふーん、なるほどねー……………ん?」
「理解できたかい?」
「いやちょっと待て。俺はどうやって記憶を操作したかなんて聞いてないぞ。神聖力に耐性が付くのはわかったが」
いや、実はわかっている。
でも考えたくない考えたくない考えたくない考えたくない考えたくない。
「もうわかっているんだろう?神聖力に耐性が付くということは」



「僕の力が通用しない。つまり君達を両想いにさせることはできないということだ」



「卍解!!」
神聖鎧装を装着。
この羽虫ぜってー殺す!
やはり――――――…
勇者なんて見返りがないとやってられません、てな。

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