《MUMEI》
新章
自分は何故、勇者となったのか。
今でもその事を考えてしまう。
願いを叶えてくれる、そう聞いた。
だから、それにすがった。
何度も、何度も死にかけるような戦いを強いられ、段々と心が凍てつくような感覚に苛まれる。
願いはまだ叶っていない。
その事に焦燥感を覚えずにはいられない。
だけど、もしもようやっと願いが叶ったとしても。
笑えるだろうか。
そんなイメージを抱くことすら、難しい。
自分の手は、もう汚れすぎている。
あの子をこの手で抱いても、喜んではくれないだろう。
それが例え、願いのために悪魔と戦っていたとしても。
それが代償なのかもしれない。
笑顔が消え
感情が消え
大事なものが消えて
それでも戦い続ける。
戦って戦って
あの子のために戦って
それで充分だと、満足だと言い聞かせ、
『私』はまた、武器を握る。
あの子の未来を、祈りながら―――――――




――――新章、開幕

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