《MUMEI》 予想外。「こ、硬本!?なんでここに!?」 「いや、晴斗が無事かどうか見にきただけだぜ」 だが、絶妙なベストタイミングだ。 「晴斗先輩?」 「んな!?千雨もいるの!?」 ひょっこりと覗く千雨。 もしかして見られた聞かれてた!? ほぼ全裸の殖野さん。 息荒く、半裸の僕。 っていうかこれ絶対事後にしか見えないよね! 「ち、違うんだ誤解なんだ勘違いだ事故なんだ」 「あ、大丈夫ですよ晴斗先輩。全部聞いてたんで」 「へ?」 じゃああれも全部聞かれてたのかーあははは、はぁぉあああああ!? 「は、恥ずかしい…………」 「晴斗先輩が狼にならなくて私としては一安心です」 胸に手を撫で下ろす千雨。 本当は、多分焦っていたのかもしれない。 ま、まあとりあえず何事もなかったし………。 これにて解散―――――とは勿論ならなかった。 「千雨ちゃん、お願い。今日だけ私と先輩を許して」 殖野さんが千雨に向き合い、言う。 「ひぇ」 突然のことにすっとんきょうな声を出してしまった。 「ダメ」 ぴしゃり、と完膚なきまで拒否する千雨。 「そこをなんとか」 「ダメ」 「一生のお願い」 「絶対ダメ」 いつまで続けるつもりなんだろう。 「はあ、しかたねーな」 息を吐き、やれやれと呟きながら僕の頭をポンポン叩いた。 「じゃ、俺があの子もらうわ」 「は?」 とっさには頭に入らなかった。 未だに問答を続けている千雨と殖野さんの間に入り、殖野さんの前に立つ。 「な、なんですか」 思い出したかのように胸を腕で隠す。 「晴斗のこと、諦めろよ」 オブラートに包むこともなく、はっきりと口にした。 「無理です。ふざけたこと言ってると、サシマスヨ?」 な、なにをー!? 「だからお前さ、俺の女になれよ」 「え?」 臆することなく言い切り、返答を待つことなく殖野さんの唇を奪った。 「――――んっ!ぁん………ふっ…………」 硬本と殖野さんはくっついたまま中々離れない。 僕と千雨が見守る中、倉庫には殖野さんの微かな喘ぎ声といやらしい音だけがあった。 やがて殖野さんは硬本の首に腕を巻き、されるがままに倒れていった。 そこではっ、となる。 「ここここ硬本!?えっとあれ…………30分後にまた来る!」 殖野さんを押し倒している体勢のままOKサインを見せる硬本。 千雨を連れ、急いで倉庫から飛び出し、扉を閉めた。 中で何が起きているかなんて、言うだけ野暮だろう。 前へ |次へ |
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