《MUMEI》
独りっ子同士
「こんにちは、早いね。」

神部とその友人の二人が座っていた。


「こんにちは。」

友人の方は愛想良く接してくれるけど神部は相変わらず目線も合わせようとしてくれない。
乙矢似?


「あんまり集まらない部活で悪いね。でも今月は七生もバイト終わるし高遠以外は何とか都合つけて撮影入れるよ。」

そう、七生がね……。


「放送部の先輩達ってビジュアルレベル高いですよね。」


「俺や東屋みたいなのが浮いてしょうがないよな。」


「え、先輩謙遜しないで下さいよ〜。綺麗じゃないですか。」


「なにそれ!」


「自覚無いんですか?」


「去年のコンクールの映像見てたのか、恥ずかしいな。」

話を変える。
そう、乙矢と七生が主演だった。まだ七生は背が低くて、童顔だった。
俺もまだストレス痩せする前だ。


「今年ドキュメント部門で出すんですよね。俺、ドラマだったら大根だし、どうしようかと思いました。」


「安心して。俺も大根だから。ドキュメントは一年のときやったけど中々やり甲斐あるよー。ドラマも魅力はあるんだけどさ。
誤解の無いように言っとくけど一応、この内容先輩の趣味ね。」

神部の友人の安西は社交的に話を聞いてくれるので流しているドラマ映像ごとに撮影の思い出を解説してしまった。


「……酷い。よくこれで全国行けましたね。」

映像が完結して神部が初めて口を開く。


「その感想は関心しないな。先輩や俺達は一生懸命やった、その結果が形になったんだ。
まだ解らないかもしれないけど、内容は何であろうと皆で一つのものを作るのは最高に楽しいよ?」


「詭弁だ」

何だ、挑発してるのか?チワワ顔なのに中身は狂犬?
空気が一気に重たい、沈黙が続く。


「おはよー!」

有り難い……七生様が来てくれて空気が変わった。


「おはよう」

嗚呼、君のこのタイミングの良さが好きです。


「おはざーす」

安西はどこか体育会系のノリがある。


「……こんにちは」

こんにちはと言うことで間違いを遠回しに強調している。考えすぎか?
いずれにせよ神部についてはまだ探る余地がある。

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