《MUMEI》
空は青いが、地は黒い
「fat。任務だ」
なぜか頭に‘安全第一’と、書かれたヘルメットをかぶったおっさんが私に言った。
「どんな」
短く言うと、
「こんな」
と返ってきた。ひらりと舞い降りてきた書類には、
「ハルミグループ会長、晴海 直也の殺害計画について」
赤い字で、物騒な事を書いている。ハルミグループといえば、かなり大きな会社だ。
「了解」
fatがそう答えたのを見届けると、おっさんは
「死なない程度で頑張れ」
無茶にも程がある言葉を残して、奥の扉へと姿を消した。部屋から出ると、ガラス張りの天井から日の光が差し込んできた。
(空は青いが、地は黒い・・・か)
幼いときに読んだ記憶のある本の言葉だ。
(どうせ私は、あの空にはいけない。だって、暗殺者だから。人の命を奪うから)
自嘲気味に笑うと、自分のグループ部屋へと歩を進めた。空は、嫌みなぐらいに青い。

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