《MUMEI》
残り三時間
 ユウゴはユキナの電話を受けながら、正門を見下ろしていた。

そして、五度目の電話を受けた頃、正門の辺りに動く影を発見した。
「おい、来たぞ」
ユウゴは受話器に向かって言う。
その向こうでユキナが緊張したように「すぐ戻る」と答えると通話が切れた。
ユウゴも受話器を置き、相手の人数を確認する。

約二十人程度だろうか。
さっきよりも、かなり増えている。
少ない残り時間でユウゴたちを確実に殺す気なのだろう。

「……まだ見つかってないはずなのに、この人数か」
眉間にシワを寄せながらユウゴは呟いた。
二人がここにいることがわかれば、周辺からさらに応援が来るだろう。

 時計を確認すると七時過ぎ。
残り約三時間、生き延びれるだろうか。
もし、生き延びることができたとしても、奴らがそこで攻撃を止めるかどうかはわからない。

それでも、やるしかない。

ユウゴはグッと拳を握りしめた。
その時、準備室へ息を弾ませたユキナが入って来た。
「何人くらい来た?」
彼女は窓から注意深く下を見下ろす。
「いっぱい」
ユウゴは肩を竦めながら答える。
「うわー、ほんとだ」
 警備隊たちは、まだ正門前でウロウロしている。
一つ、一つ、ユウゴたちの痕跡を探しているのだろう。

「で?どうすんだ?」
 ユウゴが聞くと、ユキナは自信ありげに笑みを浮かべて「とりあえず、待ってみようよ」と言った。


そして、待つこと数分。
ようやく、警備隊たちがゾロゾロと校舎内へ侵入してきた。
「来た来た」
なぜか嬉しそうにユキナは笑う。
そして、その笑いの意味をユウゴに教えるかのように叫び声が階下から響いてきた。

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