《MUMEI》

ガッ!ゴッ!


破城槌の音はこちらの現実でも聞こえている。
それはハンマーか何かで石でも叩くような音だった。


ひひひ!うひゃひゃひゃ!


その音と共に、どこか下卑た男達の笑い声が聞こえてくる。


星良は立ち上がると、がらんとした病室を横切り、ドアの無い戸口から笑い声のする廊下を覗いた。


いかにも半グレな雰囲気を発する男達の集団が、廊下で何かをしている。


「おい!ちゃんと良い画とってくれよ」


包丁を持った男が、カメラを構えた仲間の男を振り返ってしゃべっている。
その顔には、点々と返り血がこびりついている。
振り上げた包丁が降り下ろされると、
コンクリに刃物の当たるガッ!とゆう音が、また辺りの空間を震わせ鳴り響いた。


「このスナッフ映像を闇ルートに流せば、また遊ぶ金がガッポリ入ってくるぜえええ!」


逃げなければ!


だが、星良自身の意思を無視するかのように、足は歩行を止めようとしない。
殺人集団に背後から近づいて行く。


轟轟轟轟轟轟轟轟轟轟轟轟!!!!


頭の中で血の渦巻く音が鳴り響いている。


そして...見た。

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