《MUMEI》

男達に囲まれ、仰向けのまま虚ろな眼で天井を見上げている、馴染みのある顔を。


18年間、何度も鏡の中で見てきた顔を。


アア、そうだ!
私はこの男達に、殺されたのだ!


全身の力が抜けて、足下からへなへなと崩れ落ちそうになりながらも、じりじりと後ずさりしようとする。


その背が何か柔らかな壁にぶち当たった。
何者かが、背後から両肩をつかんだ。


思わず「ひいっ!」とゆう悲鳴が喉奥から漏れる。
身を隠す間も無い。
解体作業に夢中になっていた男達の視線が、一斉に星良に向けて集まる。


凍りついたような一瞬の刻、背後から星良の肩をつかんだ何者かの息が、耳元にかかった。


「これは現実じゃない...」


「え?」


「そうさ!」


包丁を持った若い男が逆さに顔を上向けるようにして、星良を見上げて叫ぶ。


「全て悪い夢なんだなああ、あーひゃっひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!!」


狂ったように笑いながら、男の大口が耳の辺りまで割けていく。
他の男達の顔も片目が肥大する者や顔の形が歪みだす者など、殺人集団達はにわかに人間離れした様相を見せ始めた。


ただ呆然とその有り様を見つめる彼女の耳に、またあの声が低くささやいた。


「ほら、あの音が聞こえないか?」


じりりりりりり!!


非常ベル?


どこかから鳴り響く音。


いや...違う...


この音は...

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