《MUMEI》
4月
 私はずいぶん生きてきた。
それでもまだ人生の半分も生きていないだなんて、信じられない自分がいる。
我が身に、これからどんなことが待ち受けているのだろうか。
私の夢は?そしてこれからの日々に、どんな喜びが待ち受けているのだろうか?
 私は今、小さな公園に来ている。
見回してみても、そんなに大きな物も、立派な物も無いこの公園だが、私はいつも考え事に浸るとき、ここへくるのだ。
今日もこうして、一本の木立の下のベンチに腰を下ろし、何をするわけでもなく思いに耽る。
 風がふいている。
別世界に行っていた意識が、その少しの冷たさに呼び戻される。
ここで私は、はたと思い出す。
いつも私は、この、少し冷たい、それでいてどこか暖かい風に、いろいろなことを感じさせられたことを。
そうだ。何年も前の4月も、こんな風がふいていた。

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