《MUMEI》
約束。
「生徒………会長に…………?」
「ああ。なにがなんでも、なってやると決めたんだ」
埜嶋は口を塞ぎ、俯く。
「じゃあ…………私たちは、敵同士って………ことなのね」
敵、だと?
なんで敵にならなければならない?
「泉佐野会長は…………本気で新斗くんを切り捨てたの」
それだけでボクは事態を把握することができた。
本来立候補するはずだったボクが泉佐野会長の信用を落とし、暫定的に次期生徒会長を立候補、推薦する者が誰もいなくなってしまったのだろう。
この打開案として、泉佐野会長は同じく生徒会で活動していた埜嶋雪美を次期生徒会長に推薦したのだろう。
これで泉佐野会長との対立は決定的となった。
「私は………!こんなの間違ってると思ってる!生徒会のみんなで争って、生徒会長の座を奪い合うだなんて!おかしいってば!」
瞳は潤み、すがるように叫ぶ。その際にボクの手は埜嶋の肩から滑り落ちた。
「…………おかしいことは何もない。本来生徒会選挙は奪い合うようなものだから」
「でも!こんな簡単に切り捨てられて…………新斗くんは何も思わないの!?悔しいとか思わないの!?」
思わないわけがない。
だが、元を辿れば生徒会を追放されたのも、全てボクが悪いんだ。なにか言う資格などない。
それにボクは、泉佐野会長に立ち向かうと決めたんだ。
「なんでこんなことになったのよ…………。今まで楽しかったのに。私には無理だよ、生徒会長なんて。荷が重すぎるよ」
ついに、涙が零れる。
恐らく、埜嶋は本気で生徒会長をやりたくないわけではないのだと思う。
ただ埜嶋には、想い描いていたものがあったのだろう。
ボクの心が、弱かったせいで。
それを壊しかけている。
ならボクは。
「ボクが…………それを作り直す」
なんの脈絡もなく、ぽつりと呟く。
「え………?」
当然埜嶋は訳もわからず、ただ呆然とした。
「必ず、必ずボクがこの生徒会選挙で生徒会長の座を勝ち取ってみせる。泉佐野会長になんかに負けやしない」
「それって………嘘、じゃない………?」
「当たり前だ。ボクはもう嘘なんかつかない。約束、する!」
口に手を当て、ぽろぽろと大粒の涙を流す。
それを指で拭き、笑いはじめた。
「約束、だよ」
「ああ、約束だ」
この時ボクは、神名や逆間に見せる時と同じように笑えているだろうか。
そうあってほしいと、思った。

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