《MUMEI》
丁度良い。
その後、埜嶋から生徒会の情報をもらい、今日はこれで解散となった。
踵を返し、トイレを通過すると、カタンと音が鳴った。
「…………………」
トイレの前で停止。分かりやすく、トイレの中にまで聞こえるように大声でため息をついた。
中へ入ると、案の定だった。
「あ………、えと、奇遇だなっ!」
神名はにかっと不器用に作った笑顔と共に軽く右手を上げる。
「なにが奇遇だ馬鹿者が」
こんな奇遇があって堪るものか。
「どこから聞いていた?」
「にぶちん!、のところからだな」
「結構最初からだったようだな」
「悪かったって………」
「神名、お前今人格変わっているのか?」
「ん?ああ、今は『俺』だ。基本的には『僕』だが、たまには代わってもらってんだ。特に意味があるわけじゃねえけどな」
「そうか」
神名も、こうして日常生活と折り合いをつけているんだな。
現象になどに負けない。
小鳥遊晶にも、泉佐野会長にも、勝ってやる。
ボクはこれくらい傲慢で丁度良い。

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