《MUMEI》
「ゲームじゃない」
戦闘開始から約五分。
受けたダメージ、多大。
与えたダメージ、無し。
もう淘汰の剣(エクスカリバー)を振り回す体力は、残り少ない。
まぁ神聖力には全然余裕あるけど。
体力と神聖力の量は比例しないのだ。
「つーか、ジリ貧だよなぁ。斬った所から再生すんだもんな。無理だ勝てね」
「諦めるなよ」
「そうは言うけどさ。あんなチート野郎どうやって倒すのよさ」
「そこをなんとかするのが勇者というものだろう?」
戦闘中とかじゃなかったら羽根を引き千切っていたところだ。
無駄話をしていると、前後左右中央からマモンの腕が伸びてくる。
これなら飛天御剣流、九頭龍閃で相殺だ!
だがしかし、そんな余興をするほどの体力はない。
「神聖障壁(聖なるバリア・ミラフォース)!!」
レヴィアタン戦の時に使用した神聖障壁の応用。前回は俺を中心に全体に展開したが、今回は淘汰の剣に直接神聖力を注ぎ、前方に神聖障壁を展開。強度はこちらの方が数倍硬い。
六芒星の盾は悉くマモンの腕を弾き返す。
ピシ、とヒビが生まれ始める。
「冗談じゃねえ!」
ありったけの神聖力を淘汰の剣に注入。みるみるとヒビは癒えていく。
だがこれも、時間の問題………。
「……………?」
チカッ、と淘汰の剣の鍔付近にある青い光球が一瞬輝いた。
それは次第に点滅していく。
これは、俺がまだ知らない淘汰の剣の機能?
「どぼこ見でられはんの?」
歪な声。それは俺の上から聞こえた。
背中の腕は増殖を繰り返し、一本の巨大な腕に変化した。
それを容赦なく振り回し、叩き潰す。
「くっ」
神聖障壁を上に急展開。だが、受け切るだけの構築力は間に合わなかった。
一撃で粉砕され、俺を吹き飛ばす。
「かはっ!?」
壁に激突し、体に力が入らず、その場に倒れた。
自分の無力を痛感する。
今まで大した怪我すらせずに悪魔を退け続け、自分には傲りが生まれていた。
その事に自覚はあった。だが、それを改めようとは、思わなかった。
今、俺はまたその傲慢な考えに至った。そしてその結果がこのザマだ。
少なくとも、今回は自分の意志で戦うことを選んだんだ。
それを貫く。
だから、立つんだ。
相手への傲りなど捨てろ。
自分の意志で立ち上がれ。
「大切なことを思い出したみたいだ………。俺は結局、お前達との戦いをゲームって奥底で思ってたんだ」
ボロボロの体に喝をいれ、淘汰の剣をマモンに向ける。
「これはゲームじゃない。命懸けの戦争なんだ。それを教えてくれたお礼にお前は――――――」
ニッ、と微笑み、マモンの未来を告げる。
「血祭りだ」

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