《MUMEI》
「可能性の」
「勇者とは思えない発言をするね」
「今に始まったことじゃねえだろ」
今回はグルルヌとの無駄話はさせてくれないようで、先程俺を叩き潰した巨大な腕を四本も作り、迫る。
「神聖障壁・応用編!」
淘汰の剣(エクスカリバー)に直接神聖力を注ぎ込み、強固な六芒星のバリアを作り出す。
「そんで更に応用!こいつを直接ぶち当てる!」
神聖障壁の中央に淘汰の剣の鋒を当て、『突き』の要領で神聖障壁をマモンへ弾いた。
プラス、回転も掛けておいた。
旋回する神聖障壁はまるでドリルのようにマモンの腹を貫く。
「ぎぃごらぎゃあああああ!!!」
意味の分からない断末魔。
だが、この程度ではまた再生する。
ここからは、賭けだ。
神聖障壁・応用編のように、淘汰の剣に神聖力を注入させる。
淘汰の剣が黄金に輝く。
「うおおおおおおおお!!」
まだだ。
こんなものではないはずだ。
詳しいことは知らないが、淘汰の剣には秘密がある。
その可能性は恐らく、俺が思っている以上のものだろう。
人だけが神を持つ。今を超える可能性という名の内なる神を!
なら!今見せてみろよ!
「ぐおおおおおおお!!」
その時、淘汰の剣に変化があった。
鋒が回転し、刀身の中に吸い込まれていく。
それと同時に、刀身からは隠されていた新たな鋒が現れる。
更に刀身は開き、先程の形態よりも一回り大きくなった。
「は?へ、変形した!?」
開かれた刀身にはメーターのようなラインがあり、今は暗い。
「なんだっつーんだこれ!?」
新たな鋒に刃はなく、カッターナイフのようにナナメに尖っており、所々に穴が存在する。
だが、従来の形態の方が断然切れ味は良いだろう。
「あぶがくがー!!」
ついに復活したマモン。その驚くべき形状は先程よりも禍々しさを凌駕する。
走り迫ってくるその迫力は、まさに悪魔。
「ええい、ままよ!」
再び神聖力を注入。
すると、割れた刀にあるメーターがみるみると上がっていき、青色のラインが鋒にまで届く。
鋒の穴からぶくぶくと溢れていく青色の光。これはまさか………。
マモンに向き、剣を高く構え、縦一文字に剣を下ろした。
その瞬間、溢れていた青い光は鋒から放出された。
まるで水流のように形は統一性はなく、だが放出した剣よりも明らかに巨大だ。
天井にまで延びた光は静かに両断していき、やがてマモンに落ちる。
今まで淘汰の剣で斬っていた時とは、斬り応えがまったく違っているように感じた。
それこそ、水を斬っているかのような、そんな手応え。
マモンは斬り裂かれていることにすら気付いておらず、確実に青い光の刃が肉体を蝕んでいても俺に迫る。
やがて、マモンは完全に真っ二つに斬り裂かれた。
マモンの左半身の足がガクンと下がり、その時、ついにマモンは気付く。
崩れ落ちる左半身を見て、右半身も静かに、その場に伏せた。
「なんだよこれ」
淘汰の剣の可能性に俺は賭けた。
だが、可能性とかそんなものではなかった。
こいつを扱って、負けなどあり得ない。
こいつは可能性の獣どころか、化け物だ。

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