《MUMEI》
プロローグ
赤く。

赤く赤く燃えている。

白い純白に染められていたカーテンも、美味しい料理が並んだテーブルも、ふかふかのソファーも。

赤々と燃えている。

そんななか、一人の少年のその母親が炎の中にいた。

少年の目は遠くを見つめ、母親の目からは次々と涙が流れている。

しかしそれを拭おうともしない。

一見、息子を守ろうとする母親の姿にしか見えない。

なら、彼女の手の中にあるものは…



ドクドクと少年の腹から血が溢れてくる。
母親が持っているナイフによって。母親の手によって、刺されている。


炎の命がごうごうと燃え生きるなか、少年の命は、終わりへと徐々に近づいて行く。

その時母と目があった。

何故母親が泣いているのか、自分が刺されているのか、少年には分からなかった。

自分を殺さないといけない事への涙か、それともほかに深い事情があるのか。

だからといって、殺していい理由にはならない。

と、そこで気づいた。


ああ、これは夢か。

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