《MUMEI》
虚無と予感と罪悪感。
一体何が起こったのか、終わった今でもよくわかっていない。
ただ確実なのは、ボクは言葉を話せなくなった。
そのせいで、生徒会選挙に落選してしまった。
埜嶋との約束を、破ってしまった。
それはつまり、嘘をついてしまったということ。
みんなと共に今日のためだけに頑張っていたというのに、それを無駄にさせてしまった。
ボクのせいだ。
現象が起こったとか、そんなものは関係ない。
ボクのせいだ…………。



――――――――――――――――

一体新斗に何が起きたのか、すぐに推測できた。
現象が起きたのだ。
何故こんなタイミングで、と嘆いたところで、起きてしまったものはもう変えられない。
それよりも、気掛かりがある。
二週間前、新斗は埜嶋さんと約束をしていた。
ボクが必ず勝つ。君を生徒会長にはさせない――――と。
今、埜嶋さんが何を思っているか、付き合いの短い僕には分からない。
だけど、嫌な予感はする。
今の新斗に、絶対に言ってはいけない言葉がある。
都合悪くそれを口に出す可能性は0ではない。
最悪の結果になる前に、新斗を埜嶋さんから遠ざけなければ。
そのために、僕は控え室へ走った。


―――――――――――――――

「新斗くん…………」
意気消沈という言葉は、まさに今の新斗くんのことを指すのだろうと私、逆間久美は思った。
私は前にも一度、新斗くんがこんな風になってしまったのを知っている。
本人から聞かされたわけではなくて、私が一方的に、知ってしまった。
新斗くんは今、罪悪感に押し潰されそうになっている。
何に対しての罪悪感なのか、詳細はわからない。
新斗くんの感情の一部が私に流れ込んだ時、新斗くんは自分自身を否定し続けていた。
大丈夫って、言ったのに。
ツラかったら、みんなを頼ってって言ったのに。
押し潰されそうになっている新斗くんを、私はただ見ていることしかできない。


――――――死んでしまいたい―――――――


新斗くんの感情の一部がまた、流れ込む。
「そんなこと思わないでよ…………新斗くん」
私では、何もしてあげられない。
「少しいいかい?」
そんなときに、私達に話しかける者がいた。
それは泉佐野明日香生徒会長と、埜嶋雪美さんだった。

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