《MUMEI》

携帯電話の神、ポケベルの神と別れて、再び歩く。

「意外にも近代的なものの神様ばっかりなんだな。もっと古典的な海の神様や樹の神様がいるのかと思ってたよ」

「もちろんいるわよ」

神様たちは僕には気づかないようだった。もしくは気づいていたのかもしれない。どうでもよかったのかもしれないが、何も言われないのでいいことにしておく。

「ほら、あそこにいらっしゃるのが海の神様よ」

パソコンの神が指差すほうに、痩身の老女が座っていた。
青黒くてボサボサの長髪、蒼白な顔。細い手足を折り曲げて座っている。

「あれが海の神様なの?」

「イメージとちがった?」

「だいぶね」

「あの人も最初はすごく美しくて豊満な女性だったのよ。年齢は変わりないけれど。だけど、人間の開発や汚染のせいで、ああなっちゃったわけ」

僕は改めてその海の神様をながめた。
青い髪の隙間から見える瞳は少しにごっていた。

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