《MUMEI》 携帯電話の神、ポケベルの神と別れて、再び歩く。 「意外にも近代的なものの神様ばっかりなんだな。もっと古典的な海の神様や樹の神様がいるのかと思ってたよ」 「もちろんいるわよ」 神様たちは僕には気づかないようだった。もしくは気づいていたのかもしれない。どうでもよかったのかもしれないが、何も言われないのでいいことにしておく。 「ほら、あそこにいらっしゃるのが海の神様よ」 パソコンの神が指差すほうに、痩身の老女が座っていた。 青黒くてボサボサの長髪、蒼白な顔。細い手足を折り曲げて座っている。 「あれが海の神様なの?」 「イメージとちがった?」 「だいぶね」 「あの人も最初はすごく美しくて豊満な女性だったのよ。年齢は変わりないけれど。だけど、人間の開発や汚染のせいで、ああなっちゃったわけ」 僕は改めてその海の神様をながめた。 青い髪の隙間から見える瞳は少しにごっていた。 前へ |次へ |
作品目次へ 感想掲示板へ 携帯小説検索(ランキング)へ 栞の一覧へ この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです! 新規作家登録する 無銘文庫 |