《MUMEI》
「あなたと同じく」
「《断罪の剣》。それがその剣の名だよ。もうその形態にたどり着くとは、恐ろしい男だよ、君は」
グルルヌが言う。勝手に恐がってろ。
俺はこの剣の方が断然恐ろしいけどな。
なんかガシャンガシャン変形したと思ったらなんでも真っ二つにしちゃうくらいの切れ味叩き出してくれちゃって…………。
「つーか、変形するなんて聞いてねえぞ」
「教えてないからね」
こいつに聞いたところで無駄か。
あとでこの剣の切れ味をこいつにも試してみよう。
ただ、とりあえず今は、疲れた。
初めてまともにダメージを与えられて、正直全身の節々が痛い。
でもさすが神聖力。どうやら自己治癒能力も兼ね備えてあるようで、傷はどんどん癒えていっている。
「ふぅ」
神聖鎧装を解く。
ただ装着しているだけでも、みるみる神聖力もってかれるな。
「まぁ、そんなもんか―――――――――――ッ!?」
気付いた時には、もう遅かった。
迫り来る無数の腕は俺を巻き込み、壁に激突した。
「死な…………死ね…………死、死死し氏師444444」
マモンは、左半身だけで、生きていた。
「ぐふっ、がはぁっ!!」
無理だ………生身で攻撃を喰らった上にこうも身動きがとれないんじゃ、神聖鎧装を纏うこともできない。
腕は俺を押し潰そうとどんどん圧迫していく。
「ぐあああああああぁぁぁ…………!」
意識は、遠のく。
これで、俺は死ぬのか………。
やがて完全に目が閉じようとしたその時、ドン、という発砲音のようなものが聞こえた。
その瞬間、俺は光に包まれた。
その光は俺を無視し、マモンの腕だけを打ち消していく。
この、光は一体―――――
「あなた、余裕を見せるなら、悪魔の弱点である心臓を破壊してからになさい」
この声、聞き覚えが、あるような気がする。
誰だ?
微かに目を開くと、そこにいたのは、強盗犯に殺された、あの女性だった。
「な…………、んで…………」
「あの程度で死ぬと思った?練習すれば神聖鎧装を見えなくすることだってできるのよ」
え、じゃああの血はなんだったの?わざわざ血糊を用意したの?手ぇ凝ってんなぁ。
っていうか、神聖鎧装って…………ことは、まさか。
「もう流石に理解したと思うけど」
マントを靡かせながら颯爽と現れた女は、ライフルをその手に持ち、右手でトリガーを、左手でライフルを支えた。
「私もあなたと同じく、勇者」
右手が青色に輝き、それがライフルに移り、銃口が発光する。
「勇者、冬馬椿姫」
発砲した瞬間、青色の弾丸は一直線にマモンの心臓部を貫いた。
マモンは何も言わず、言えず、射抜かれた胸を見て、ただ驚きに狂っただけだった。
俺だけでは、なかったのか。
ライフルを持ったもう一人の勇者、冬馬椿姫。
ここに推参。

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