《MUMEI》

「ほんとに、挨拶もなしに出ていくつもり!?」
急いでエルサーディルに近寄っていき呼び止めた。
「ビロネックロ卿!」
だがエルサーディルには聞こえなかったのか会場から出ていく。
見失わないようにセレティロも会場から出るとエルサーディルが中庭に入っていくのがみえた。
「ビロネックロ卿!」
中庭には二人しかいないからなのか、セレティロの声がよく通った。
「なんだ」
「私が呼んだのならすぐに止まりなさいよ!私は王宮魔法士なのよ!そもそも、あなたから私に挨拶に来なきゃいけないし!」
大声でセレティロが言ってもエルサーディルは眉をピクリとも動かさない。
「私はあなたの上司なのよ!」
「言いたいことはそれだけか?」
「なっ!」
「あんな大声で呼べば普通に気づくだろ。だがあえて無視した。その意味が分かるか?」
「分かるわけないし!何?嫌がらせ?」
自分に対して敬意を祓わず、敬語も使わないエルサーディルにどんどん腹がたっていった。
「あそこは会場の出口だろ?あんなところで王宮魔法士と魔線修繕士が話していたら他のやつらがいつまでも出られないだろ」
「あ…」
「それに皆が崇拝する王宮魔法士が今みたいに大声でわめいていたら、おまえの評判はガタ落ちだぞ」
「うぐぐ…」
正論を言われてしまったセレティナは言い返すこともできず、唸ることしかできなかった。

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