《MUMEI》

「あの人よ。あんまり近づかないようにね」

その紅い髪の青年は何故だか椅子にくくりつけられていた。それも紐なんて生ぬるいものじゃなく鎖だ。
痩身の青年は鎖でがっちりと椅子に固定されていたのである。

「神様にしちゃ酷い扱いだね」

「そうかしら?見てればわかるわよ」

「それにしたって可哀想じゃないか」

核の神様は力無くぐったりと頭を垂れていた。腕は後ろで固定され、足も椅子の脚に鎖で固定されている。手足は鎖ですれて赤く、爛れていた。
見るだけでも可哀想だ。
きっと核兵器が恐ろしいので他の神々から迫害を受けているのだろう。

「話しかけていいかな」

「好きにすれば。どうなっても知らないけれど」

パソコンの神は核の神の座っている椅子には近づこうとしなかった。
僕は核の神様に話しかけてみる。

「・・・こんにちわ」

「やぁ、青年」

紅い髪の青年は、至って穏やかな笑みで会釈する。

「何だってこんな仕打ちを受けているんです?」

「そりゃあしょうがないさ。俺は核の神だし、みんなに嫌われているんだ。だからこうしてみずからを拘束し、原子力発電のときだけはたらいているんだよ」

核の神は少しだけ悲しそうな顔をして答えた。

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