《MUMEI》
「僕だけが」。
「……………無視するなよ、新斗」
僕の知っている新斗とは別人のようだが、新斗には変わりはない。
それでも尚、新斗は周りの生徒達に笑顔を撒く事をやめない。
僕以外の生徒に…………
僕の中のなにかが弾けた。
「目を覚ませよ新斗ぉおおお!!」
『俺人格』へ代わる。
僕と俺の怒りは理不尽だ。
わかっているが
この衝動を抑えることが、できない。
叫び、走り、新斗へ手が伸びる。
信じられないことが起こった。
『俺』の手は真っ直ぐ新斗の胸ぐらを掴みにいった。
だが、結果だけを言うと、掴むことができなかった。
まるで空気を掴もうとするように締めた手のひらには何も無く、手は新斗をすり抜けた。
「―――――――――は」
今この瞬間に何が起こっているか、目の当たりにしているのにも関わらず、わからなかった。
確実に『俺』の手と新斗の胸が重なっているのに、触れた感覚がない。
それは新斗も同様のようで、まったく変化がない。
―――――――触れない
その刹那、一人の生徒が僕に気付かず通りすぎる。
本来なら衝突するはずが、なにも無かった。
僕の事が見えていない?
僕の声が届いていない?
この世界で異質なのは、他でもない、僕だった?
「そんな…………待ってよ、整理しなきゃ…………でも、こんなことって」
知らない記憶
知人の変化
実態のない僕
わけがわからない。
混乱しているからとか、関係ない。
僕だけが、この世界から取り残されている。
「う、うわああああああああああああああああああ」
なんだよこれ
ふざけるなよ
なんで僕が
誰でもいいから…………!!
誰か、助けてよ!!























「呼んだかい?神名薫くん♪」

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